この手は何を望んだのだろう
火炎銃の業火はあっという間に村一つを飲み込んでいった。
虚しい焼け跡には炭化した生活のあとが残るのみ。シルヴァラント攻めの攻撃拠点とするのに必要として侵略した土地は小さな田舎の村だった。
パシリ、踏み締めた足の下で乾いた音がした。残り火を消させる為に部下たちに指示を出して、足元に視線を投げる。
黒い、炭だった。
魔科学の干渉によって暴走させられたマナの炎、火炎銃に焼かれた体は収縮することなく、死に際の様子を物語っている。大人と見るにはまだ小さいそれは、何かを求めるかのように精一杯腕を伸ばして、その細い腕は白い軍靴によって踏み拉かれていた。
最早、軽い音しかしないそれは確かに元は人であったのだろう。この手は最期に何を求め掴もうとしたのか。
クラトスはそ、と足を外すと静かに、黙祷を捧げた。
[幕切]