■tos | ナノ
Precious Time


[nana様より前書き]

大人の雰囲気が素敵なユアクラを書かれる、寒河様のサイト「YY+YY」(行行重行行)様と、相互して頂きました!

そのお礼に何か…、と思い、書かせて頂いたユアクラです。
ほのぼのとのリクエストを頂いていたのですが、ギャグになってしまった気も…(汗)

ともかくも、愛だけは込めて、捧げさせて頂きます!


Precious Time


エルフ達が住む里のさらに奥深くに、トレントの森はある。
その森の中で、クラトスは一人、ロイド達が来るのを待っていた。もう間もなく、彼らはここにやって来るはずだ。
自分を打ち倒すために。

と、近くで枯れ葉を踏みしめる音がした。
人の気配だ。
だが、振り返った先にいたのは、待ちかねた一行ではなく、よく見知ったハーフエルフの青年だった。

「………何をしに来た。」
「……ロイド達は、まだ来ないのか。」
青年はクラトスの問いには答えず、逆に問い掛けた。
何事も自分の思う順で物事を進めようとするのは、この青年の悪い癖だと、クラトスは思う。
だが、長い付き合いともなれば、もはやそんな部分にも慣れてしまった。
クラトスは、短く肯定する。
「……ああ、まだだな。」
それを聞いたユアンは、クラトスの隣に腰を落ち着けると、傍らの小枝を拾い上げ、燃え盛る火に投げ入れながら呟いた。
「……ロイドは強くなったぞ。油断しているとおまえでも危ないかもしれぬ。」
「そうか。」
それにはクラトスも気づいていた。
ロイドの剣の上達ぶりは、めざましいものがあった。
日々命を賭けた実践で鍛えられているのに加え、本人の強くなりたいという揺るぎない意志や、もとよりの才もあるのだろう。
そんなロイドの姿は、クラトスにとって、頼もしくも、誇らしくもあった。
「それに……、おまえにとってはその方が好都合なのではないか?」
「………何の話だ?」
「オリジンを解放してほしいのだろう?」
クラトスがそう問えば、ユアンは僅かではあるが、珍しく表情を曇らせた。
「ああ……。」
オリジンの解放。
それは同時に、クラトスの死を意味した。
彼の命の炎が尽きるとき、初めて精霊王はその姿を現すのだ。

だが、愛しい息子の手に掛かって死ねるなら本望だ、とクラトスは思っていた。
それはロイドの気持ちを考慮しない、自分勝手な行いだとわかってはいるが。

「……さあ、もう戻れ。ここにいても、仕方ないだろう。」
静かにそう言って、また火に薪をくべ始めたクラトスの手を、ユアンは不意に掴んだ。
そして、グイと引き寄せ、抱えるように腕に収める。
クラトスは一瞬、驚いたようなそぶりを見せたが、そのままおとなしく身を任せた。
「………どうした。」
「…しばらくだけ、こうしていたい。」
「………仕方ないな。」
クラトスは苦笑し、その背を軽く叩く。
「こんなところにロイド達が来たら、どう言い訳するつもりだ。」
「……子供は見るな、とでも言っておく。」
「なんだ、それは。そんなことを言って、おかしな誤解などされたら、たまったものではないぞ。」
フフ、と小さく笑いを漏らすクラトスと、無言でその体を抱くユアン。
が、そんな二人を、遠巻きに見つめる一行がいた。

「あーあ、俺たち、もう来てるんだけどなー…。」
「なあ、ロイド君、どーするよ、アレ。とてもじゃないけど、間に入れる雰囲気じゃないよなあ。」
「…だな。邪魔するのも悪いし、先にルインの復興、済ませちまうか。」
「そうだな〜。そうするかぁ…。」

こうして一行は森を去り、親子の対決は、また先延ばしになって行くのだった。

End.

*手違いから後書きを保存していたリンク先が削除されてしまいました。申し訳ございません。


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