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夕映えに、溶ける


 じっと、窓辺に身を寄せ、夕日で焼ける街を同室の男は見詰めている。傭兵という触れ込みでやって来た男は、窓の下へ走る通りを見下ろしていた。沈み際の日の光へ照らされた横顔は、赤みがさして見える。
 その姿を、少年は沈黙したまま見詰めていた。
 遠く、子供たちの歓声。不意に目を細めた傭兵の姿は、窓の外の風景の中へ溶けるように希薄になっていく。
「なあ」
 なあ、ともう一度掛けられた声に、傭兵が顔を上げた。
 少年は眉間に皺を寄せ、いつになく小難しい顔をしている。彼の、年下の親友が見たならば、また宿題でも忘れたのかと勘繰るところだろう。
 どうした、と聞き返す静かな低音を耳へ留め、少年──ロイドは難問に詰まった子供のような顔を俯けたまま、口を開いた。
「好きだ」
 他意のない純粋な好意を打ち明けるにしては、困難な顔をした少年へ、傭兵は静かな目を向ける。
 つむじに視線を感じたロイドは、歯を食いしばって漸く顔を上げると、ひたり、今度は視線を合わせた。
 泣きそうにもみえる表情を少しも変えることなく、もう一度。
「好きなんだ」
 どうしようもなく、それは心の内へ留め、吐き出す。
「あんたが、好きなんだ」
 詰まるような一瞬の沈黙の後、泣くな、と掛けられた声に、少年は泣いてなんかねえよ、と声を零した。


[幕切]



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