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まるであの日のまま


 彼女は、まるであの日のまま其処へいた。
 彼女の遺体はすっぽりと大いなる実りへ包み込まれ、眠っているかのように安置されている。
 結局は、あの日から誰も先へ進めれていないのだと、クラトスは思った。
 ミトスは姉を失い、ユアンは婚約者を失った。
(そして私は──)
 そう考えて、クラトスは否と自分の考えを否定した。
(一歩も進めれていないのは、私一人か)
 少なくともミトスは彼女を取り戻そうと己の心の向くままに我武者羅に駆けはじめ、ユアンは少年を止める為に暗躍している。クラトスは、少年の行動に反対し、咎めたいけれど、それも出来ずに協力をしないと言う形でのみ意思を示している。
 彼女を失ったその日、全ての人間は少年の敵となり、クラトスは人間として罪を償いたいと願った。それは今でも変わることは無く、クラトスの行動を縛り付けている。
 それが、言い訳に過ぎないと解っていても。
 クラトスの罪の意識は、あの日と変わることなく彼女の遺体と共に大いなる実りの中へたゆたっていた。


[了]


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