片手で軽く制し
「なにさ、ユアンの癖に」
「なんだ、田舎もの」
言い争う二人を見兼ねたように、クラトスは片手で軽く制した。
「落ち着け、二人とも」
間に割って入ったことで、ユアンは一端口を閉ざし、ミトスはクラトスへ駆け寄って捲くし立てる。
「クラトス、聞いてよユアンがね」
「口では勝てんから援護を貰おうというのか」
ふん、と鼻で笑ったユアンへ、ミトスが顔を真っ赤にした。
二人が怒鳴りあいを再開するより早く、クラトスは呆れた表情で溜息を吐く。
「ヘイムダルでもヘイムダールでも、アスガードでもアスガルドでも綴りは同じだろう」
「全っ然同じじゃないよ」
「同じなわけがあるかっ」
綴りはと限定しているだろうと、クラトスは再度溜息を吐き、エスカレートしてしまった口論に、どうしたものかと腕を組んだ。
[了]