それでも、心を占めるものは
*ユアマー表現を含んでいます注意
ユアンとマーテルが漸く付き合い始めたのだと知った。
街で買出しをする際、ユアンとマーテルの二人で出ることが多くなった。そこへミトスが混ざることもあるが、ユアンとマーテルが揃っている頻度は多い。
二人が随分長くミトスへ配慮をして話し合ってきたことを、ミトスも理解していたのか。付き合うことにしたという二人の報告に対して、少年は思っていたよりも反発しなかった。
それでも報告を受けた直後の数日間は二人に対して妙に余所余所しく、避けるような素振りも見せていたが、根気強く語りかけるマーテルと態度を変えることのない──ミトスからかみなり親父と揶揄されていたままの──ユアンへ、少年も次第に態度を軟化させていった。
二人でいれば仲睦まじく、三人寄れば仲良くまるで家族のような姿に、クラトスは微笑ましさすら感じ、買出しに出るといえば率先して荷物番を買って出た。
騒がしくどの順番で何を買うと決めながら宿を出て行った三人を、部屋の窓から見送った後、一息つき。
「……静かなものだな」
一人というのは。そう呟いて、クラトスは妙に寂しさを感じた己に苦笑した。
[了]