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嫌悪も執着のうち


 全く忌々しい男だとユアンは舌打ちをした。
 戦場で相対した時からいけ好かなかった。此方の神経を逆撫でしておきながら決して感情的にならないところも。家柄のせいなのか、そもそもそういう性分なのか。己のペースを崩すことも無く、こちらの嫌味をも真正面から受け取る生真面目で不器用なところも気に入らない。
 なによりあの男は、戦場で幾度と無く剣を交えたというのにユアンのことを憶えてもいなかったのだ。ならば此方も最低限度の会話をするだけだと切り替えれば、クラトスはユアンの意図に気付いた素振りもない。
 何の反応も手ごたえも返さない相手に腹を立てるのも馬鹿馬鹿しい。
 ユアンは殊更大きく溜息を吐くと。相変わらず此方を意識したようすもない相部屋の男へ、再び苛立ちを募らせたのだった。


[了]


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