ばっしゃあぁあああんっ!!!「小金井泳ぐなぁー!!」「こんだけ広いなら大丈夫!!」「そういう問題じゃねぇよ!!」…あー、平和だ。遙か向こう側で慎ちゃんがバタフライで泳いでて、それを順平が怒鳴り散らしてても平和に思えてくる
…にしてもどーして順平と冬来先輩は風呂でも眼鏡掛けるんだろ。曇らねぇの?見えてんの?


「冬来さんは眼鏡が無いと只の岩が人間に見える程まで何も見えなくなるからな。だから何処だろうと眼鏡は必須なんだよ」

「…あれ?俺声に出てた?」

「あぁ、ブツブツと根暗みたいに呟いてたぞ」


根暗は酷くないかい舞尋君。…あ、頭にタオル乗っけてるよこの人
何で乗せてるのか聞くと「普通じゃないのか?」と逆に聞かれた。…実はちょっと天然?

その時バシャアァアッ!!と、俺と舞尋君の顔面にお湯がぶっ掛かった。犯人は…、


「あ゛………わ、悪い、斗真」

「(ヤ…ヤベ…ッ)」


どういう経緯でかは不明だけど、大我と秋君が桶まで持ち出してお湯の掛け合いをしていたから、その余波が俺達の方にまで来たらしい


「ハハハ………大我、秋君、覚悟は良いな」

「…二人まとめて先輩への接し方を叩き込んでやる」


数分後、二人が問答無用で湯船に沈められたのは当然の処置である


「賑やかだなー。斗真も傷の事なんて忘れてるな」

「春稼先輩に"何か格好いい"と騒がれるだけですみましたもんね…」

「黒子ー、お前相変わらずその話題になると暗いな。もう割り切ったんじゃなかったか?斗真に言われて」

「…はい」


「テツヤーッ!!鉄ちゃんッ!!そこ危ない!!」

「?斗真さ、」


バッシャアァアアアンッ!!!鉄ちゃんとテツヤが何か話しているみたいだったけど、そんなのお構い無しに二人めがけて大我が放り投げられた
…ヤバい、ちょっとやりすぎたかもしんない!やったの俺じゃなくて悪乗りして参加してきた晴曲君と舞尋君だけど!!

「お、おい!無事か二人共!」「大丈夫ー?」大慌てで身体を洗っていた俊と冬来さんが駆け寄ってきた。…大丈夫では無いと思う


「ゲホッ!…か、火神?大丈夫か?」

「ま…まさかぶん投げられるとは思わなかった………です」

「ね、ねぇ、テツヤは?テツヤは何処!?」

「「………あれ?」」


あれって………あれじゃねぇよぉおおおおおッ!!!え!?テツヤ何処!?溺れた!?沈んじゃった!!?


「テツヤァアアアッ!!何処だぁあああッ!!!テェエエツゥウウヤァアアアッッ!!!!!」

「おおおおお落ち着け斗真ぁ!!!何か某劇場のアシタカみたいな呼び方になってるから!!誰か斗真抑えろ!!こいついきなり過保護発揮するから危ないんだよ!!!」

「りょ、りょーかい!」

「分かりました」



「………あれ?いるじゃん、黒子」


沈黙が流れ、慎二と一緒に俺に抱き付くテツヤに視線が注がれた


「テツヤ無事だったか!!良かったぁぁぁあああああっ!!!沈んで流されたかと思ったぁぁぁあああああっ!!!!!」

「斗真さん…締まってます。嬉しいですけど苦しいです」

「(またどさくさに紛れて何か言った!!)って!!お前何処いたんだよ!!いつ避けたんだ!?」

「あぁ…それは…、」





「お ま え 等 ?」



空気が凍り付いた。あれ、おかしいな。大浴場なのに物凄く寒いぞ?

恐る恐る振り返ると、そこには髪を下ろしてにっこりと笑顔を浮かべて…仁王立ちしている堅がいた

…ヤベ、死んだ



「此処が誰の肉親が経営している旅館か、まーさーかー忘れてたりなんかしていないよなぁ?

泳ぐの結構。騒ぐの結構。はしゃぐの結構。それくらいは別に構わないけどなぁ………誰が取っ組み合いまでして良いよっつったよ。オイ



今からまた砂浜をランニングして来るか素直に謝って大人しく風呂に入ってるか選ばせてやる。さぁどうする?」


「「「ごめんなさいすみませんもうしません」」」

「よろしい」


全員マッハの勢いで頭を下げた。一部除くけど

テツヤが言うには、遅れて風呂に来た堅によって、間一髪横に身体を反らされて助かったらしい。鉄ちゃんは…体格的に大きいから無理だったらしいね

………堅をこの旅館にいる間は、出来る限り怒らせないようにしないと地獄見るな





ーーーーーーーーーー…
ーーーーー…
ーーー…


「はー、良い湯だった!何か身体軽い気がするし!」

「はしゃがなかったらまだゆっくり出来たけどなー俺達」

「で、やっぱり黒子は例によってダウンか。一日で何回ダウンしてんだよ」

「逆上せるまで入ってなくて良かったのにな」

「…斗真さんが入ってるなら、入ってようかと…」

「お前…斗真の体力考えて一緒にいたら死ぬぞ?」


そこまで言わなくても良いじゃないのさ順平

風呂から上がり、取り敢えず全員浴衣に着替えた。いつの間にやらテツヤが俺の分を持ってきてたから驚いたけど…


「じゃー大我、凛ちゃん、早速飯作りに行くか。全員分だから急いで作らねーと」

「そうだな」

「………」

「あ、俺も手伝うよ。斗真程上手くないけど」

「いや、じゅーぶんお前も出来るから」


早速厨房へ直行しようとしたら、一足早く風呂から上がってた降樹が走ってきた
何か血相変えて向かってくるけど…何だ?何かあった?



「大変です斗真さんっ!!!カントクが全員疲れてるだろうからって、やっぱり私が張り切って作るわとか行って厨房に行っちゃいましたぁっっっ!!!!!」



それは本当に大変だ



11≠20