えーはい、取り敢えず今の素直な気持ちを言いましょう。ビックリした
堅は確か"民宿"つったよね?普通のしがない"民宿"っつってたよね?いや待とう。俺の目の前にあるこの建物は誰がどこからどう見ても立派な"旅館"ですから。何これ、どこまで続いてんのこの立派な塀は
中に入るとまさに日本庭園ばりの庭が広がってるし、大きな池には錦鯉だけならず亀までいるし…

…え、間違えてないよね?まさか堅の奴間違えてないよね?
という心配をしていたが堅は「来たよ叔父さーん」て言いながらスタスタ中に入っていったから間違いではないらしい
もう少しでテツヤを背中から落っことすとこだったよ危ない
日向達もめっちゃ驚いてるし…鞄とか落としてるし。…うん、やっぱり此処は"民宿"じゃあなくて"旅館"だ


「へー、凄いねー堅チャンの叔父さんってー」

「こ、こんな良いとこだとは思わなかったわ…。実際に泊まったら高そう…」

「すっげー!!露天風呂とかあるのかな!」

「………!」

「確か堅はあるって言ってたけど」

「マジで!?」


慎ちゃんと大我大はしゃぎだな。眼がキラキラしてる
大我は露天風呂というかこういう旅館に泊まる自体初めてだろうから当たり前か


「しかも貸切だろ?何か悪い気もするな…」

「確かに…」

「にしても、堅どこまで行ったんだ?遅くねぇ?」

「そうですね。叔父さんを探しているんでしょうか」


数分そこそこ旅館の前で待っていると、中から堅が慌てて走ってきた。どうしたんだ?


「皆すまない、どうやら叔父さんが………その…」

「どうした?何かあった?」

「叔父さんに何かあったのー?」


俺と冬来先輩が聞くと、堅は険しい顔をして、頭を抑えた状態で「実は…」と続けた



「………俺が皆を連れて来るって知った翌日から、北海道に新鮮な魚を仕入れに出掛けたらしくて…。しかも自分で釣る気満々だったって…」

「「「北海道ぉっっっ!!!!!?」」」

「おー!堅の叔父さんは漁師なのか?凄いな!」

「自分で釣りに行くって凄いねー」

「そこじゃねぇだろ!!北海道つったら沖縄と真逆だし!!そんでもって漁師だったら旅館経営とかしてねぇよ!!!」

「…それに加えて魚は何とか仕入れられて此処に送られてはいるんだけど、無理がたたって腰やったって」

「えっ!?嘘!!それって大丈夫なの!?」

「重度のぎっくり腰らしい」

「ぎっくり腰かいっ!!!」


驚くリコちゃんだったけど、真顔でぎっくり腰と言う堅に秋君が溜まらずツッコんだ
「それで、今泣く泣く入院してるらしい。退院は一週間くらい先なんだって」と堅は言った。…何か、凄くその叔父さんに申し訳ない


「叔父さんは此処で料理長も兼任してて、俺達の料理も叔父さんが作る予定だったんだよ。他の従業員は数人の御女中さん以外は全員休ませてるらしくて…

だから、料理は俺達が作らなきゃならなくなった。すまない」

「そーいう事なら任せといて!!私が作るから!!」

「いや!!監督は休んでて良いから!!ここは斗真と火神とかに任せよう!!!」

「そうそう!!リコちゃんには前回の合宿の時作って貰ったからさ!今回は俺と大我やる!うん!それが良い!なっ!大我!!」

「お、おう」

「あら、そう?」


大慌てでとんでもない事を言い始める監督に向かって叫ぶ俺と順ちゃん。うん、リコちゃんに作らせたら此処の厨房と俺達全員がとんでもないことになる
堅達は俺達があんまりにも必死なんで、どういう事なのか大体察しがついたらしい


「彼女はそんなに料理が下手なのか?」

「下手なんてもんじゃねぇ…壊滅的だ」

「女性の料理はどんなに不味くても笑顔で食べてやるのが男ってものだ。なのにお前は駄目だなダ眼鏡」

「はっはっは、じゃあお前試しに食ってみるか?同じ口が叩けるかどうか楽しみだなこのダブル泣きボクロ」

「日向、試合でもないのにクラッイタイム入ってるぞ」


うん、舞尋君と順平じゃ火に油だ。もう俺達は受け流す事に耐性ついてきたけど度が過ぎると順平は怒る

「取り敢えず部屋に行こうか。御女中さんも待ってるし」と堅が言うので、俺達はそれぞれ鞄を持って旅館の中に入った
とにかくテツヤを休ませねぇと。…だってさっきから背中でぐったりしてて全く反応しねぇんだもん逆に怖いよ!!!



5≠20