「まぁ、そんな事を斗真と話していたんだけど、勿論全員の旅費は叔父さんが出すから心配しないで?」

「でも、旅行は2泊3日の予定なんでしょ?ゆっくり休むのも良いけど、WCもあるし…練習を少しでも休むのは避けたいのよね」


翌日、堅は練習中の誠凛高校に訪れていた。まぁ、昨日のうちから今日来るって俺に言ってたから、とっくに知ってたけど。順平やリコちゃん達にも連絡してたから堅が来ても特に驚いてなかった


「それは俺の所も同じだよ。今はじっくり休ませて、後々みっっっちり練習させるつもりだし」

「(………ホントに飴と鞭の差が絶妙だわこの人)」

「民宿も貸切だからゆっくり出来るよ。大勢来るからね
それにね、リコちゃんにとってはとても良い条件があるんだ」


にっこり笑って言う堅に、俺は口元を引き吊らせるしかなかった
他人からしてみればあの笑顔はどっかのデルモ(モデル)顔負けの爽やかスマイルなんだろうけど、長年アイツと連んでいた俺からしてみれば黒い笑顔にしか見えないんだよね

隣でシュート練習をしていたテツヤが「何を話してるんでしょうね」と呟いた
…何となく、というかほぼ確信に近いが、リコちゃんにとっては最高、俺達にとっては最悪な展開が待っていると分かってしまった

だって………屈んでリコちゃんの耳元で喋る堅の話を聞いて、徐々に徐々にリコちゃんが笑顔になってるんだもんよ!!!
順平達もその笑顔を見て「あ、こりゃヤバい」的な顔してるもん!!


「…貴方も鋼業で第二の監督の立ち位置にいるだけあるわね。抜け目がないわ」

「いや、女の子なのに男子バスケ部を見事にまとめて的確な指示を出してるリコちゃんに比べたら、どうって事ないよ」

「「ふふふふふっ」」


怖ぇぇぇえええええっっっ!!!!!
あの二人の笑顔がとてつもなく怖ぇぇぇえええええっっっ!!!!!

鉄ちゃんを除いた他のメンバーは瞬時に悟った。「これ絶対地獄を見るパターンだっ!!!」と


「皆!話は聞いてたわね!今週の土曜日に、二坂君の叔父さんのいる沖縄に行くわよ!」

「マジで!?」

「ちょい待てカントク!!い、今…二坂と何話してた?」


さっきと違いすんなりと沖縄に行く事を了承したリコちゃん
日向の質問に、リコちゃんはにーっこり笑顔を浮かべて、二坂と顔を合わせ…


「二坂君の叔父さんの経営してる民宿の近くに、市民体育館があるんだって!」

「だったら練習も出来るし、」


「「沖縄旅行と称した合宿やっちゃおうぜ!って事!」」

「「「そんなこったろうと思ったわっ!!!!!」」」


良い笑顔親指を立てる二人に俺達はツッコむしかなかった
そうだよね!まさか沖縄に遊ぶだけの目的で行くことをリコちゃんが許すわけないもんねっ!!


「でもよ、アンタの叔父さんのいる民宿ってことは、アンタも一緒に来るんだろ?」

「そうなるね。それがどうかした?火神君」

「一応ライバルだし…しかもアンタは主将だからよ。俺達が合宿してる所にアンタがいたらおかしくねぇか?」


確かに、大我の言い分はごもっとも。でもね大我………この二坂 堅という人間を侮ったらいけないよ?

堅は「その事か。火神君、俺がそんなズルッこい事すると思う?」と笑って言った



「フェアじゃないのは嫌いだからね

勿論、俺の率いる鋼業学園バスケ部も、合宿に参加させるよ?」


・・・・・・・・・・。

えーと………それはつまり、こういう事ですよね?堅さん



「「「…鋼業学園と合同合宿ッ!!!!?」」」

「そゆこと」

「じゃあ決まりね」


語尾に音符が付いてそうな感じに言う二人に、俺達は固まるしかなかった



3≠20