ずる…っ、刀を引き抜かれると同時に、首を掴まれ断崖絶壁スレスレの所で抑えつけられた

相手は土遁使いだったらしく、地面の中に身を潜め、俺を地中から狙ったようだ

…って、今は悠長そんな事を考えている暇じゃない



「ハハハッ!!やっぱり餓鬼だな!忍なら背後にも気を配るのが常識だろう!!」



あぁ、その通りだな

一瞬でも気を抜いた俺の油断が招いた結果
腹を刺されようが何されようが文句は言えまい

さて、この状態でも何とかしようと思えば出来るが、此処で下手に術を使えば俺も確実に谷底に落下するな

下を流れる川は底が浅い。着地に失敗すれば瀕死の重傷、または死亡確実だ



ハヤト(一か八か…千鳥流しで…)



と、思った時だった





マシロ「 おい 」



思わず一瞬肩が跳ねた

俺に被い被さっている男のせいで見えないが、覆いこえたのは確かにマシロさんの声だった

…が、問題はそこじゃない
腹の傷とかそんなもん今は頭の中になかった



マシロさんの声が今までに聞いた事がないくらい低くて殺気立っているのだ



抜け忍の男もその尋常じゃない殺気に気付いたのか、顔面蒼白させて震えながら振り向いた

漸く見えたマシロさんの顔は…うん、簡潔に言わせてもらったらだよ



ヒカリ関連で激怒したシスコン全開のチトセ先生より恐ろしかったッ!!!!!



マシロ「人の後輩に手を出すとは命知らずもいたもんだなぁぁあああ

そうか、そんなに死にたいか。俺は優しいからな、苦痛という苦痛を味わわせながらあの世に送ってやるから安心しろ」



全然優しくねぇし寧ろ鬼畜に溢れてるからなマシロさんッ!!!!!

つか、抜け忍の男恐怖のあまり青くなる通り越して真っ白に燃え尽きてるから!!もう意識無いからこの人!!!


途端に辺りは冷気に包まれた

マシロさんの頭上には巨大な氷塊………おいまてぇぇえええええッ!!!!!
でか過ぎるだろ!!あまりにもでか過ぎるだろ!!この大きさはヤバイ!!!

抜け忍どころか俺にも被害がくる!!確実に俺も大ダメージ喰らうからコレッ!!!

っていうか死ぬわッ!!!!!



ーぽいっ

可愛らしい効果音付きで、マシロさんは満面の鬼畜笑顔で氷塊を放った

俺終了の時がきた



ードッゴォォオオオッ!!!!!


氷塊は俺達がいた一帯を根刮ぎ削り取りながら、谷底へと落下していった

ちなみに俺はギリギリのところでマシロさんに腕を引かれたがらなんとか無事だった

…マシロさん、頼みますから加減というものを知って下さいお願いします



ハヤト「あの…マシロさ、」


恐る恐るマシロさんに声を掛けたら、ゴガンッ!!!と、思いっ切り頭を殴られた

痛い…ッ!!あまりにも痛過ぎるッ!!たんこぶどころか頭が割れるかと思ったわ!!!



マシロ「この大馬鹿が。あんな雑魚に追い詰められて、暗部でやっていけると思ってんのか

全くカカシのアホは何をコイツに教えたんだ…まぁアイツの事だからアテにはならんが」


ハヤト「………せん」


マシロ「ん?」


ハヤト「…すみません」



反論も何もせず、すんなりと謝ったからか、マシロさんはあまり見たことがない素っ頓狂な顔していた

…何だよ、俺が素直に謝ったらおかしいか。反省してるんだよこれでも



マシロ「…ま、言わせてもらえば、俺はお前に謝られる資格は無い」


ハヤト「はい?」


マシロ「あれ見てみろ」


ハヤト「あれって何…」



ピシィ…ッ!!マシロさんの言う"あれ"を見た瞬間、身体が硬直した

俺の視線の先に、大ッ量の抜け忍の屍の山があるんですけどどういう事ッ!!?



マシロ「お前を偵察に行かせたのは、アイツ等が近くに潜んでいたのに気付いたからだ

まぁ、まさかお前の方にも抜け忍共がいるとは思わなかったからな…

結果、俺はお前に駆け寄るのが遅れ、大怪我させてしまった



すまなかったな」



謝るマシロさんに、今度は俺が呆気に取られた

何だよそれ。何か、今の俺物凄く格好悪いし情けない

マシロさんも、俺の知らない間に闘ってたのか…
しかも、明らかに俺が相手をしていた抜け忍達の倍の人数だ

…もはや溜息も出ない



マシロ「おい、早く木ノ葉に帰るぞ。お前の傷を鳴雛 チトセに治してもらわないといけないからな」


ハヤト「え、この抜け忍はどうするんです?」


マシロ「さっき尋問部隊の連中を呼んだから問題ない

さっさと行くぞ。モタモタするな」



言うや否や、マシロさんは俺を丸太抱きにして担ぎ上げた

「な、何でこの担ぎ方!?」と叫ぶと「耳元で叫ぶな、お前は人の鼓膜でも破りたいのか」と返ってきた。返事になってねぇ…!!



マシロ「カカシの言っていた通りだな。お前はもう少し素直という言葉を覚えて学習すれば良い」


ハヤト「いきなり何ですか…ていうかもうちょっとマシな担ぎ方を…」


マシロ「危なくなったら、大声で助けを呼ぶくらいの素直さを身に付けろと言ってるんだ

お前はまだ子供なんだからな。それ位、仲間内の俺達なら少なくとも許される」



お前がいつかの任務中に、またあんな状態に陥ったとして

その時俺の言った事が実行出来れば、



その時は一瞬で敵を蹴散らすなりカカシに押し付けるなりして駆け付けてやるよ





マシロさんの言葉を聞いて、俺は小声で「…考えておきます」と言ったら後頭部を小突かれた

あぁもう!!何でこんなに格好良いことをサラリと言ってのけられるんだこの人は!!







(ちょっとおおお!!?ハヤト何その怪我ぁぁあああ!!!)
(チ、チト、チトセ先生っ、は、早く手当て、手当てを)
(おおおおお、落ち着いてヒカリにトウキ!今から手当するから大丈夫!うん大丈夫だよ俺なら出来る!!)
(貴方が一番落ち着いて下さいチトセ先生)
(ハヤトがぁぁあああああ!!!ハヤトのお腹に血が…!!ハヤトがぁぁあああああ!!!)
(お前が一番五月蠅いぞ愚兄が。そのトサカを全て毟って新しく苗を植えてやろうか)
(兄に向かってなんて言いぐさ!!)

(…早く手当てしてくれませんか?)

この後貧血でハヤトがぶっ倒れたのは無理も無い




Title by.hmr






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4≠4