近ない?.
実は、男子と出かけるんは、何気に初めてやったりする。 だって、大体休日は部活もしくは自主練、そもそも信介を好きな時期が長く、告白されても付き合うっちゅー段階にいくことはなかった。 付き合ってもない男子と、出かけるって…どうなん?と思って、せっちゃんに聞いてみたけど「華の女子高校生が何言うてんねん。」とツッコまれてしまった。
「ほんで、どこいくん?」
「…紅葉、見にいこうかって。」
「ジジくさっ!!ギャップ無さすぎるやろ、大耳くん…」
「本人気にしとるらしいからやめたって…」
大耳が、紅葉を見にいかへん?と聞いてきた時、あたしも、おんなじこと思ったけど。 女子高生が紅葉とか見て楽しいんか?とも。でも、大耳が、言った一言で、ええなってなった。
「女バレのユニホーム、赤やん。あたしに紅葉似合うと思ってんって、言われたんよ。」
「おお、口説き文句やな。」
ユニホームの赤は、結構気に入ってる。先輩達が、赤のユニホームを着て春高で戦っていた姿が、印象に残っとるせいかもしらん。
少し浮かれて、せっちゃんにどんな服着ていったらええか相談して…迎えた当日。
「…私服、初めて見た。」
「そりゃ、そうやろ。もっと違う言葉無いん?」
ジャケットとショートパンツのセットアップ、インナーには、タートルネックのニット。女の子らしすぎるのは似合わへんけど、こういう格好は人に褒められる。
「かっこええし、かわいー…な?」
「せやろ、気に入ってんねん。」
大耳は、シンプルな装いだった。薄手のステンカラーのチェック柄のコートに、あたしと同じようにタートルネック。高身長でスタイルがいいだけに、めっちゃ似合う。
「大耳、パンツ選ぶの大変そうやな。」
「せやねん。上はでっかいの流行ってるからええんやけど、下はつんつるてんになる。」
つんつるてんになっている大耳を想像すると、ちょっとかわいーんとちゃう?って笑ってしまう。そんなあたしが面白くないのか、大耳は拗ねるふりをした。 高身長あるある、を交わしながら、目的地の公園へ。 美術館も併設されている目的地は、まさに秋を表したような場所だった。
「秋やなぁ…」
「晴れてよかったわ。苗字、こっち向いて。」
「ん?」
かしゃ、と軽い音が響いて、写真を撮られたことに気がつく。不意打ちに撮られるのは恥ずかしくて、大耳のスマホを奪おうとするけれど、手が届かへんように遠ざけられる。
「絶対盛れてないし!あかん!」
「そうか?」
大耳が画面を傾けて、あたしに向けた。四角に切り取られたあたしは、紅葉を背景に笑っていた。 悪くない写りやったから、まぁええかなと思ってスマホから手を離した。
「苗字は、やっぱり赤が似合うな。」
「…せやろ。」
二人して、周囲の写真をパシャパシャと撮っていると、大耳の頭に、紅葉が一枚。ひらりと乗った。
「大耳、頭に乗ってる。」
「え、どこ?」
的外れなところを払おうとする大耳は、子どもみたいに髪をぐしゃぐしゃにしていく。 いつもはピッシリと分けられた髪が乱れていくのがなんだか勿体ない。
「あー…もう、そこちゃうって…」
背伸びをして、大耳の頭に触れた。 ぐしゃぐしゃにされている間に絡まってしまったらしく、中々取れへん。
「んー…あと、ちょっと…あー。」
「と、とれた?」
「ちょっと待ってなー」
「できるだけ急いで貰えると助かるねんけど…」
「わかったって!…んっ、よし、いけた。」
踵を地面に付けると、大耳の喉仏がすごく近くにあって、思ったよりも近い距離に、身体が固まる。
「あ、れ…ち、近ない?」
「あんな…俺もそれ、ずっと思っててん…」
急に恥ずかしくなって、勢いよく後ろに下がると、肩先が誰かにぶつかった。
「あ、すみませんっ!」
「あぁ、お気になさらず。」
若いのに、お年寄りのようなしっかりとした返答にギャップを感じる。何より、聞き覚えのある声やった。 下げていた目線をあげれば、そこには。
「ーー信介、」
「苗字か。私服やから、ぱっと分からんかったわ。」
私服姿の信介。しっかりと繋がれた手。隣には、かわいらしい女の子な服を着た、彼女がいた。
prev next
TOP
|