張られた根は婉曲.




「帝光祭だが、ミョウジのクラスはどうだい?」

「特に問題なく、準備は進んでる。」

赤司は自分から聞いてきたくせに、そうか、と興味なさげだった。

「中華喫茶、だったな。ミョウジの担当は?」

「調理の予定…だけど、生徒会の仕事との兼ね合いがあるから、抜けてもあまり困らないウェイトレスか、宣伝に回すかもって言われた。」

「へぇ。じゃあ、宣伝にしてもらうと良い。当日の予定だが、ミョウジと俺は出し物を回って、問題がないかの抜き打ちチェックを担当するように頼まれてるからね。」

初耳だ。確か私の担当は、来賓の受付とゴミの処理に関するチェック、生徒会の企画による募金の呼びかけだったはず。赤司も同様に来賓の受付、各模擬店責任者への通達事項の確認、開始挨拶、その他…と結構忙しかったはずだ。

「その仕事は、担当業務に加えてってこと?」

「いや。俺らの仕事を一部減らして、だ。実行委員、それから生徒会の後輩達から仕事の分配を見直してほしいと要望があってね。来年度の引き継ぎのためにも、俺らが在校のうちに自分たちでやりたいと言われた。」

たしかに、私と赤司が仕事を多めに引き受けては居たかもしれない。けれど、後輩達にしっかりと仕事も振り分けてあるし、マニュアルは残してある。
恐らく…気をつかわれたんだろうな。"付き合ってる"私と赤司が、一緒に文化祭を回れるように、と。

「せっかくだから、任せようと思ってね。…小さな負担でも、重さがあれば負荷らしいから。筋トレと同じく。」

「っ、…忘れてって言ったでしょ!」

当日の仕事は、来賓の受付のみ。赤司はそれに加えて開始挨拶、という分配になった。
帝光祭中は、赤司とずっと一緒に過ごすはめになる。
後輩達の思いやりに、つい溢してしまいそうな溜息を、ぐっと堪えた。


ーーーーー

来たる帝光祭。

赤司は難なく開始挨拶を終わらせた。来賓の受付もソツがなく。地域のお偉いさん達は、赤司を見るとすごく喜んでいた。赤司は来賓の顔と名前をすべて頭に入れていたようで、名前を尋ねることはなく、軽く世間話をして受付を済ませていた。

「…そろそろ来賓の方もひと段落する頃だし、後輩に任せるとしよう。ミョウジは、着替えてくるんだろう。引継ぎは俺がやっておくから、先に行ってるといい。」

「あ、ありがとう。」

「迎えにいくから、教室で待っていてくれるかい?」

後輩達の頬に、ほんのりと朱が差した。迎えにいく、なんて少し恥ずかしい言葉は、赤司にあまりにも似合っている。なんとなくそれに応えるのが恥ずかしくて、私は黙って頷いて教室に向かった。

ーーーーー

「…けっこー身体のライン出るんだね、」

「大丈夫だよ!ミョウジさんスタイルいいし!副会長だし!」

「副会長なの関係なくない?」

私に用意されたのは、青のチャイナドレス。スリットは学校として好ましくないと生徒会から却下されたために無いものの、スリット部分には違う色の布を当ててある。衣装係の工夫を感じた。
丈はロングで、しっかりと足を隠せているのはいいのだけれど、意外と身体のラインを拾っていて、恥ずかしい。

「あ、これも持って!」

そう言って渡されたのは、パンダのぬいぐるみだった。
首にはクラスと中華喫茶と書かれた看板を下げられている。宣伝の道具に、ということらしい。

「赤司君と回るんでしょ?じゃあ、めちゃくちゃ目立つだろうから、しっかり宣伝してきてね!」

「赤司様とはどこで待ち合わせなの?」

「あー…、教室で待っててって言われた、かな。」

そう言うと、大きくざわつく教室。もしかして、余計なことを言ってしまったかもしれない…と後悔しているところに、「副会長ー、赤司が呼んでるー!」と、クラスでも声が大きい男子のよく通る声が。

「ミョウジ、…文化祭らしい格好だね。」

「あ、赤司君!!ミョウジさん、かわいいよね!」

衣装係の子が、ぐっ!と親指を立てながら言う。
き、気不味い…!!
赤司は顎に手を当てて、微笑んだ。

「そうだね、よく似合ってる。」

小さな悲鳴が聞こえたが赤司は気にすることもなく、行こうか、と私に手を差し出した。
…これは、手をとるべきなの?と視線を彷徨わせた私の手を取って。赤司は教室を後にした。






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