『仲睦まじきは良きことだby常闇』.




「瀬呂ってさぁ、あんま苗字とのこと話さないけど、ぶっちゃけどうなん?」

突然出てきた自分の名前。
一緒に課題をしようと言っていた範太が、中々部屋に来ない上に、自室にも居ない…と三奈に尋ねると、「一階に男子が集まってたよ!」と聞いた。から、来てみたものの…。
範太がここに居るのはわかった、でも話題になってる中で出て行くのは…と言うのが半分。
範太が私のことをどう思ってるのか、気になるのが半分。

「んー、仲良いよん。」

「そんなの見たらわかるって!のろけの一つや二つあんだろー?そーゆーの求めてんだわこっちは!」

上鳴と峰田が、そーだそーだ!と盛り上がっている声が聞こえる。ほんと、あの二人は……。

「緑谷も興味あるよなぁ!?」

峰田が緑谷に話を振ると、緑谷は声を裏返らせていた。
緑谷は恋バナとかするタイプじゃないからなぁ…と、お茶子に対して、よく面白いリアクションをする姿を思い出す。異性に興味はあるんだろうけど、恋愛経験なさそう。

「えっ、と、…その二人はすごく仲が良いし、長続きしそうだよね!…ん!?長く続いて苗字さんと瀬呂君が結婚したとしたら、どんな個性の子が生まれるんだろう…テープと操液のどちらに寄るのか…でも、隔世遺伝の可能性も考えると…いや、待てよ?父親の個性の方が強く遺伝しやすいという研究結果もあったし…子どもが男子の場合は…「もういい!緑谷もういい!!」

緑谷のブツブツに対して、切島が止めに入る。すると、尾白がごもごもと口籠もりながら、

「つーか、緑谷結構な爆弾発言だなぁ…子どもって、」

「みどりやぁ…お前…子どものデキ方「峰田君!うちの緑谷君の教育に悪影響だぞ!!」

一連の流れについ頭を抱えてしまう。
いや、高校生男子だからそーゆーのに興味あるのはわかるけど!!馬鹿!!馬鹿の集まり!!

「興味あんのはわかるけどさぁ、俺の彼女のアレとかソレとか、想像すんなよ?俺だけの特権だからな。」

範太がそう言えば、ヒューヒューと茶化す声が湧いた。

「じゃあ、ノロケろよぉ…!こっちは学業に明け暮れてばっかで浮いた話はお前らくらいなんだからよぉ!!」

「峰田お前血涙流すなって…まぁ、名前のかわいーとこなら教えてやりますかねぇ。」

「瀬呂、漢気だな…!!」

「たまには自慢すんのもいいかなって。…そーだな、最近は一緒に飯食いに行ったよ。そしたら、名前の格好がすげぇ可愛いの。バックシャンってわかるか?」

「ばっくしゃん…壁に落書きするあれか?」

「轟、それはバンクシーな。背中空いてる系の服だよ。それにスキニー。ほら、うちのクラスの女子っておしゃれして出掛けてんのはたまーに見るけど、基本動きやすい服とかじゃん。ギャップ良いなって思ってけど、それが好きな子だとたまんねぇのな。」

「たまらないのかぁ…確かに、クラスの女子が女の子らしい格好してる時はぐっとくるよね。」

「尾白君もか!俺も新鮮味を感じるぞ!」

「へぇ、飯田もそーゆーの感じるのな!やっば漢だなー…爆豪は?」

「興味ねーわ、んなもん。」

「それはそれで漢だな!?」

切島の漢の定義がわからない。
てか、範太…そんな風に思ってたんだ。上着かけられたから、似合ってないのかなって思ってた。

「あと、最近髪伸びててかわいい。不器用だからボサボサになってんのもかわいいし、結び直してやろうとしたら嬉しそうなのもかわいい。」

「順風満帆…最早猫可愛がりではないか。」

「なんでも可愛く見えるもんだぜ。寝ぼけてベッドからよく落ちるらしいってのも可愛いし、この間なんか映画見に行って、ベッタベタなシーンでボロ泣きしてんの。泣き顔って結構くるよな…あ、この間の戦闘訓練のあと悔しくて「ストップ!!それは無しって言ったじゃん!」

先日の戦闘訓練のあと、轟にボロボロに負けた私は悔しくて泣いてしまっていた。寮の自分の部屋に帰るまで我慢してたけれど、泣いちゃって。
それを知ってる範太には内緒にしてって口がすっぱくなるくらいに言ったのに…!!!

「盗み聞きするからだろー?」

「範太が部屋に居ないからじゃん!てか、わかってたなら早く言ってよ!」

範太の背中を叩くと、ヒュー!とまた茶化す声があがる。

「イチャイチャしてんなよ!リア充がっ!」

「部屋でやってくれよ!ほら、苗字と課題すんだろ?」

峰田と上鳴が、野次を飛ばす。
範太は、リア充でごめんなー、なんて言いながら嬉しそうで。ムカつく。

「じゃ、これからイチャイチャしてくるわ。轟は飯田の部屋にでも行っててな。」

「なんでだ?」

「俺は構わないが…?」

「ばっっか!!お前、それは瀬呂の範太が名前に!男女のアレだ!アレ!!」

峰田の口元に耳を寄せた轟と飯田は、ハッとした顔をして。

「お、」

「不純!不純だぞ瀬呂君!!」

ぜったいよからぬ事を言ったでしょ!峰田!!

「ばーか、純愛だって。ほら、名前行くぞー」

「誤解だし!!勉強するだけだからっ!」

「リア充の勉強っつーのは、保健体育が相場っモガッ!!」

「峰田サイテー!ばか!!」

峰田に鉄拳を喰らわして。悠々と歩いて行く範太の背中にも平手を。

「いってぇ!」

そのままエレベーターに乗り込めば、範太が私の機嫌を取るように、頭に手を乗せる。
範太の大きい手のひらは好きだけど、今は素直に喜べない。

「大好きな彼女のこと自慢したくなったの、許して?」

「学食で、プリン。奢りだからね。」

「はーい、」

「…なに、そのニヤけた顔。」

「いやぁ?可愛いなって思って。」

あ、絶対馬鹿にしてる。
プリンは、明日から一週間奢ってもらうことに決めた。






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