01.
出会い系アプリを使って、マッチングした相手にドラッグを売る…そんな犯罪が横行しているという情報が入っていた。 個性由来のドラッグは、依存性が高く、身体への危険も大きいらしい。 しかも悪名の高い敵がバッグに付いているという情報もあり、公安に依頼を受けたのは1ヶ月ほど前。
無事に敵を検挙し、潜入捜査のために入れていたアプリを、そろそろ消さなきゃなと思っていた。
ーーひとつの、プロフィールを見るまでは。
「…名前さんに似てる。」
出身地、年齢、職業、趣味…プロフィールに書いてある項目は、よく知っている彼女と一致していて。
よく似た別人だろう、ただの偶然だろう…と気持ちを落ち着けながら、そのプロフィールを眺める。
「まさか、ね。」
ここ最近、会える機会なんて一切無かった。 多忙さから、連絡だってほとんどしていない。
「……うん、」
なんとなく居心地の悪さを感じて。自分が不安に思っているのがわかった。
サイドキックに、明日の午前の間だけ休みを取ることを告げた夜。 彼女の家に、最速で向かった。
「あれ、啓吾…久しぶり。」
お酒の缶を持ちながら、出迎えてくれた彼女の声は、少し弾んでいる。 ーーあぁ、帰ってきた。 実家でもないのに、そんな気持ちになる。
「久しぶり、名前さん。」
「先に言ってくれれば色々用意したのに。」
「色々って?」
少し、いやらしい聞き方で尋ねると、名前さんは顔を赤くしながら無視した。 俺より歳上のくせに、変なところで初々しい所が可愛い。
用意してくれた料理を頬張りながら、一息つく。 名前さんは向かいに座って、新しい缶を開けた。
「今日、いつもより飲みますね。」
「そう?最近はこんな感じだよ。」
缶の中身がグラスに注がれて、しゅわしゅわと爽やかな音を立てる。 泡が弾けるのを眺めて、賭けるような気持ちで尋ねた。
「…なんかあった?」
大丈夫。あのプロフィールが名前さんの訳が無い。 そんな気持ちとは露知らず、名前さんは少し首を傾げた。
「なんにも。ただ嬉しくてお酒が進んじゃうのかも。」
動揺はしていないようだ。 賭けに勝った自分の心が、ふわっと軽くなったのを感じる。
「随分かわいい事言いますね、」
「啓吾ってば、照れてる?」
いたずらっぽい顔。 揶揄うのはよしてくださいよ、と言いつつも、悪くないと思ってる自分が居る。 にじり寄り、口づけを一つ。 離れた刹那見つめ合えば、二度めの口付けは深くなる。
「ん…、ハァ…。こら、啓吾。」
「ダメだったらやめますけど?」
そう言えば、バツの悪い顔をする。 あぁ、愛しい。 雪崩れ込むように、ベットに。 会えなかった分を埋めるように、愛し合った。
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