いちばん近く!.




ダンスとバンドと演出。
個性を使いながら派手なパフォーマンスをするのはすごいなぁ。

「1-2-3-4、5-6-7-8!」

芦戸さんのカウントが響く中、ダンス隊の様子を動画に撮る。
やっぱ飯田君カクカクしてんなぁ。
ドキュメンタリー調にするとはいえ、面白すぎる。
編集のテロップ「wwww」にしちゃいそう。

「名字さん!動画ってうちら見れるの?」

「んー、ちょっと待ってね!」

フレームにしていた手で円を作る。
丁度壁が白いから投影できるな。

「おおーー!名字さん、すごいね!」

「あはは、緑谷君は目をキラキラさせてくれるから照れる。」

お礼を伝えようとすると、謎にブツブツいってるから麗日さんの影に隠れて距離を置いた。


「デク君怖がらせとるよ!」

「あぁ、ごめんね!」

「いえいえ、だいじょうぶい。」

そう言うと、緑谷君は頬をかきながら笑った。
お目々ぐりんぐりんでかわいい。
確か勝己君の幼なじみなんだっけ?いいなぁ。
ベランダ越しにお互いの部屋を行き来したりとか、結婚の約束をしたりとか、思春期になってお互いの性を意識しはじめたりとか…幼なじみ最高すぎる。
おっと、よだれが。

「なに垂らしとんだ。きたねぇ。」

「勝己君!私と幼なじみになってよ!」

「クソデクに加えてお前が幼なじみとか俺の人生終わりすぎだろ。」

「勝己君の人生を私にください!」

「死ね。」

そのままドラムスティックで叩かれた。痛い。

「名字さん、すごいや…かっちゃんにあんな事言える人、僕初めて見た。」

幼なじみの緑谷君がそう言うってことは…もしかして、私…。

「勝己君のはじめての女ってこと!?」

そう絶叫して、みんなにドン引きされ、哀れむ微笑みをむけられた時は、流石に鋼のメンタルに傷がついた。



「殺す。」

「ごめんってば〜!」

「殺す。」

さっきから、何を話しかけても「殺す」という返事がくるのはさっきの絶叫のせいです。はい。

「勝己君、ごめんね?」

「殺す。」

折角みんなの計らいで送ってもらえるんだから、おしゃべりしたいのに。あ、そうだ。

「勝己君は殺す以外のボキャブラリーないのかなー!」

B組の知り合いのような煽りをしてみると、案の定勝己君は逆上した。

「あるわクソが!!」

「おお、よかったよかった。」

ちょっと茶化すようにいうと、勝己君は個性で小さく爆発を起こした。怖い。

「勝己君、ドラム上手だったね。きっとみんな楽しんでくれるよ!」

「…どうだろうな。お前たちモブ科には俺らのことを恨んでるやつらもいるだろ。」

モブ科ってひどいなぁ。まぁ、勝己君の言う通りだ。
私のいる経営科でも、ヒーロー科の影響で全寮制になったことや、厳戒体制が敷かれていることに不平不満を吐く人もいる。

「私は、敵のせいであって、勝己君たちは関係ないと思う。敵を倒すために訓練つんでくれてるんだから、こっちも協力しないとだしね。それに…。」

「んだよ。」

「私さ、将来ヒーローのプロデュースしたいんだ。ヒーローたちのイメージ操作とかそういうので世の中の人に安心を感じさせたい。…そんで、自分の大好きなヒーローのカッコよさを世に知らしめることができるなら最高だよね!」

「何が言いてぇんだよ。」

「勝己君は、私の惚れたヒーロー第1号なんだから!プロデュースは任せといてよ!大好きな勝己君の舞台がみんなに喜んでもらえるように協力する。」

「ッハ!てめぇの協力なんかなくとも、俺らは音で殺る。てめぇは一番近くで見てろや。」

勝己君が笑った。ヒールな笑い方だけど、彼らしさが戻ったようで嬉しい。いつも自信家で、それに見合う努力をする勝己君が大好きだから。






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