ひゃあ.




「まさかの…補習回避だよ!」

テストの返却日、数字関連のテストは全部が80点超えだった。
文系科目の点数はいつも通り。寧ろいつもは赤点ギリギリだったの奴らの方が高得点だ。
勝己君すごい…!!

放課後にあっちゃんに報告すると、あっちゃんは答案の点数目を剥いた。

「うわ、ほんとに名前がここまで取れるとは…ヒーロー科こわっ!」

「だよね!勝己君どんだけ才能マンなの…?先生になれるレベルだよ…。」

黒縁メガネで、スーツを着こなす先生姿の勝己君を想像してみる。
あのガタイでスーツとか絶対にハレンチ!!
腰のラインとか絶対にR指定だよ!
黒いカーテンのその先へと続く大人の階段登るシンデレラになっちゃう…。

「ちょっと、無言でハァハァしないでよ。酸素の無駄遣い。」

「そのツッコミはひどいよあっちゃん!」

辛辣なツッコミを受けて、妄想をやめると、あっちゃんが真剣な眼差しで私の顔を見ていた。
え、何?美人さんに見つめられると穴空くどころか課金したか不安になるじゃん。

「ねぇ、一緒に勉強したんだよね?」

「うん。」

「高校生の男女が。何度も。」

「はい…?」

ずいっと、あっちゃんの目が近づく。形のいい末広がりの二重は国宝級だ。

「進展もなんにも無かったわけ?」

「進展…?テストの結果が大変よろしく…」

あっちゃんが咳払いをした。これはあっちゃんの個性である『変声』が発動する合図だ。
え、何?なんで個性使うの?

「進展っていうのは、好いた惚れたとか!あわよくば付き合ったとか!そういうのを言うのよ!!」

言葉こそあっちゃんの物だけど、その声はびっくりするくらい勝己君だった。
アンバランスさに脳が混乱するけど…やっぱり勝己君の声はイケボだ。まごうことなきイケヴォだ。

「補習回避したんでしょ。まずはそれを爆豪に報告!そしてお礼に何か用意!狙うは好感度アップ!さぁ、行ってこいっ!」

最後まで勝己君の声をしたあっちゃんに、教室を叩き出された。
なんか凄いキャラ崩壊を見た気分だ。

勝己君帰ってないといいけど…。



A組の方へ向かうと、緑谷君が廊下を歩いていた。

「あ、緑谷君。あの、勝己君知らない?」

「かっちゃん?かっちゃんならさっき教室を出てたよ。追いかければまだ間に合うと思う!」

「そっか、ありがとう!」

その言葉を聞いて走り出すと、階段の先に勝己君の姿があった。
名前を呼ぶと、立ち止まってくれた勝己くんに駆け寄る。

「…点数は。」

「補習回避です!」

成績表を差し出しながらそう言うと、勝己君はそれを引ったくって、静かに目を通した。

「ハッ、俺が教えたんだからトーゼンだ。」

ニヤッと笑う勝己君に、心臓が掴まれたみたいにぎゅんっと音を立てる。
控えめなプリティサイズのお胸が痛いよ!!
今のはイメケンが過ぎた。異議申し立てたい。

「あっありがとね!その、えっと、お礼できたらしたいので、なんか欲しいものとかあったら言ってください!」

お礼、と言っても勝己君が欲しいものとかわからない。知ってるのは辛いものが好きとかそんくらいだし。本人に聞いた方がいいと思った。

「…日曜、10時半正門前。」

「え?」

「ふつーに出かけるカッコで来い。」

確かに日本語のはずなのに意味が伝達してこない。
なんか、側から聞いたらデートのお誘いみたいな言葉だった。ほら、少女漫画とかで「日曜日10時半に待ち合わせなっ!」「うん、楽しみ!」みたいな。

本人は放心状態の私を置いて、スタスタと歩き出していくし、しばらく佇んでいた私は、後から来た緑谷君を凄くビビらせてしまった。

緑谷君の「ひゃあ!」という女の子顔負けの驚いた声が階段にこだましたので、赤面する緑谷君にとりあえず謝っておこうと思った。






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