からだにピース.




「中間テストまで2週間を切っているが、皆さん勉強は捗っているかな?赤点のものは補修なので、しっかり勉強しておくように。特に数字関係のものは経営科という自覚とプライドを持って8割以下は補修です。」

HRで担任の先生が言った言葉に衝撃を受ける。
なんで?今まで赤点だけが補修だったよね!?

「雄英の校訓はプラスウルトラ。ヒーロー科だけでなく、他の科も然り。前期までは甘くしていましたが、後期からは厳しくいきますよ!」

今日ほどこの校訓を憎んだことはない…!

HRが終わった後も教室はざわついていた。
批難轟々って感じだったなぁ。
私も皆に紛れて異論を唱えていたから、喉がかわいた。
あっちゃんと一緒に自販機までジュースを買いにいこう。


「名前、あんた数字からむとダメダメだったよね。大丈夫なのー?」

「大丈夫じゃないよ!雄英ってただでさえ偏差値わけわかんないレベルなのに…私前期から赤点+1点でなんとか逃れてたんだよ!?」

「逆にすごいね。」

中学までは勉強には難はなかったけど、入った高校のレベルが自分には高すぎてついていけてない。
文系科目は得意だから大丈夫だけど、数字がからむと散々だった。
文化祭関係で忙しかった上に、最近は勉強しようとしても邪な考えばかり浮かんできて集中もできない。

「…どうしよー!あっちゃん教えてー!」

「無理、人の勉強見れるほどの余裕はないし。…ってか、爆豪に教えてもらったら?ヒーロー科って倍率高いし、うちらより頭いいじゃん。」

「ばっっ…えっ!勝己君に教えてもらうとか無理だよ!」

思わず、自販機に入れようとしていた小銭を落としそうになった。うまく小銭口に入ってくれて安心する。
自販機の下になんか入ったら取り出せそうにない。

「えー、いいじゃん。まぁ教えるのはそんなに上手くなさそうだけどさ。」

「無理だよー!勝己君に教わるとかっ!」

そう叫ぶと、バァンッ!と自販機が揺れた。
ピッと無機質な音が続き、商品が取り出し口に落ちる。

「…なーにーが、無理だって?」

地を這うような低くドスの効いた声に、振り向く勇気が出ない。
トゥクンとかじゃない。私の心臓も心電図もびびるほど直感している。
……今振り返ったら確実に殺られる…!!

「おい変態女ァ!…こっち向けや。」

「…はい。」

あっちゃん待って!他人のフリするのやめて!!
徐々に距離とってんのわかってるんだからね!

ゆっくりと振り返ると、額を人差し指で突かれた。
普通ならこれは少女漫画の胸キュンシーンになるんだろうけど、今の状況は違う。
ドタマぶち抜かれる手前みたいなものだよ!これ!
地味にだけど圧力かかってるからね!しっかり!

「明日から、朝・昼・放課後もだ!!教え殺す!」

「えっ!!」

「テメェ、携帯だせ。」

言われるがままにスマホを取り出す。
…折られるかもしれないっ!いや、爆破か!?
スマホに取り込んだ勝己君フォルダはバックアップ済みだけど、スマホの破損は避けたいっ…!

指を掴まれて指紋認証がされて、スマホのロックがとける。
待ち受け勝己君から変えててよかった…危なかったー!!
推しの時は待ち受けにして何時も眺めていたけれど、恋愛感情に気付いてからは、流石に…と思って変えていた。 

勝己君が何か操作をして、手元にスマホが返ってくる。今ちょっと放り投げたよね!危ないよ勝己君っ!

「…その時間以外は質問はLINEでしろ。わかったかクソモブ。」

LINEを開くと、新しい友達の欄に爆豪勝己という文字がある。
状況に頭が追いつかない。
Now loading…状態だ。

「完膚なきまでに教え殺したるわ!」

舌打ちをしてから、勝己君が歩いていく。

「あっちゃん!どうしよ!ねぇ!」

「よかったじゃない。連絡先ゲットだし、明日から教え殺されてきなよ。」

さっきまで他人のフリしてたくせにあっちゃんは澄まして言う。
震えが止まらない手で飲み物を取り出すと、水滴で汗をかいたみたいなカルピスソーダが出てきた。

「初恋の味じゃん、よかったね」

「もー!あっちゃん茶化すなっ!」

少し緩くなったカルピスを一気に煽ると、乳酸菌飲料独特の香りが、炭酸といっしょに鼻から抜けた。

教室に帰りながら、スマホを見直すと、写真の勝己君フォルダはフォルダごと抹消されていた。
…爆豪勝己…恐ろしい子っ!






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