カフェインは利尿作用.




恋と自覚したその日、何も手に付かなかった。
簿記の授業では精算表間違うし、ヒーロープロモーション実習では先生の質問に答えられなかったし…。

トイレに向かう途中、ヒーロー基礎学に向かう勝己君とすれ違った時は、なんか変な感じがした。
ヒーロースーツってかっこよすぎない?
推しだった時より、5倍くらいかっこよく見えて、泣きそうだったもん。
私の膀胱が爆発するかと思った。

「あんたさ、最近変だよ?部屋にずっと居るし、今日は心ここにあらず、だし。」

そんな私の様子は、あっちゃんにも指摘されるほどだったらしい。
部屋にこもっていたのは、物間のことがあったからだけど…。

「なんにもないよー。」

「嘘つきなさんな。どーせ、爆豪のことでしょ。」

勘の鋭いガキは嫌いだよ!
おっと、他の漫画のがでちゃった。

「部屋で聞かせてよ、二人でガールズトークでもしよ?」

微笑みながら言うあっちゃんに、すごい良心が痛んだ。嫌いとか言ってごめん。あっちゃんのこういう細かな気遣いが好きです。結婚したいです。



部屋であっちゃんをもてなそうと、お茶をいれる。

「あっちゃん、センブリ茶とローズヒップティーどっちがいい?」

「普通の紅茶で。選択肢が両極端すぎるわよ。」

リクエストの普通の紅茶を入れて、向かい合わせに座ると、あっちゃんから早速切り出された。

「…で?爆豪と何があったの?」

「いやぁ、何かあったかと言われると困るけど…」

勝己君のことを好きだと分かったこと。
最近の態度は、物間から告白されたのが原因なこと。
告白の返事を保留してること。
一つ一つをプレゼンのように順序立てて話す。
今、私すっごく話術巧みな気がする。

「…めっちゃ面白い状況じゃない!えー、物間そうだったんだー!ちょっと薄々気付いてたけど!はぁー!」

「私、生まれてから16年間彼氏いないんだよねー、どうしたらいいもんか…。」

「んー、爆豪のこと好きな訳でしょ。じゃあ、物間は振るしかないじゃん。でも、爆豪をどう落とすかじゃない?」

勝己君を、落とす。
絶対できない気がする。だって、勝己君だよ?イケメン・才能マン・将来有望の三拍子だよ?
こちとら、平凡・変態・将来無謀の三拍子だよ!終わってるよ!

「ヒーロー科以外で、まともに話せてんの名前くらいだし、戦略たててみようよ。ね?」

あっちゃんが小首を傾げて言うけど、絶対面白がってるのわかってるんだからね!ミスコンの時もそうだったんだから!

話し込んでるうちに、時計の針は消灯時間に近づいていた。あっちゃんを部屋から送り出す。


「『物間は振るしかないじゃん。』かー…。」

確かに気持ちが固まった今、物間のことを宙ぶらりんにしておくのはおかしい気がする。
このまま、返事を保留することはキープしてるみたいで嫌だ。

スマホを手にとり、連絡先を選択した。

「…はい、もしもし。君さぁ、もう消灯時間になるのわかってる?」

コールは2回で、すぐに物間が出た。

「この間の、返事したいんだけど…」

「…あぁ、聞こうか。」

「ごめん、私好きな人がいる、からごめん。」

不格好な返事の後で、しばらく沈黙が続く。
夜だからか、風が窓を揺らすのが嫌に響いた。

「…僕がそんなことわからずに、告白すると思ったのか?そう思ってたなら、君は認識を改めた方がいい。」

物間がハァーーっと深いため息をついた。
電波に乗って届くはずのない吐息が、耳元をくすぐる。

「自覚をしてなかったのかもしれないけど。名字が好きなのはさ、爆豪だろ。わかってるよ。」

「なんで知ってるの!?」

「君以上に、君のことを見てるのは僕だからだよ。…とにかく!今は振られたけど、残念ながら僕は諦めが悪いんだ。覚悟しとけよ、名字。」

ブチッと凄い勢いで電話が切られた。
窓の音なんか聞こえないくらいに、自分の心臓がバクバクといっているのがわかる。

「あっちゃんに、聞いとくんだったなぁ…。」

好きな人いても、他の男の子にもドキドキしてしまうなんて、人間の作りってどうなってるのって。
勝己君が好きなのに…私はビッチってやつかもしれない。






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