一挙と一動.




文化祭も終わり、数日が経った。
変態女はブレザーの返却以来寄ってこない。いつも通りの平穏で、うるせぇやつが居ない日常に戻った。
前なら自主練にくっついてきてたやつが来ねえのは清々する。

集中できる最高の環境のはずなのに、今日は個性使用可能なエリアが全て他の生徒の予約で埋まっていた。
ついてねぇ。

仕方ねぇ寮の外周でも走るか、という選択が間違えだった。

「おっと、A組の爆発さん太郎だっけ?ランニングとはご苦労なことだね。」

「アァ!?爆豪だわ!死ねカス!」

うるせぇ奴に絡まれた。
B組のものまね野郎。

「野蛮だなぁ。…そういえば君、名字にブレザー貸してたらしいじゃないか。ヒーロー科で僕らより優秀なハズのA組が、経営科の凡人に恋でもしてるって訳かい?健気だね。」

「は?ちげぇわ、舐めんな。」

名字のことを聞いてきたこいつの意図が読めない。
どういう関係だ…?
そういえば、文化祭の準備の時、こいつの映像を眺めているあいつを見た気がする。
その時に、一緒に回るかと聞いて倒れられたのは軽い黒歴史だ。

「あれあれ?僕の勘違いだったかな、ごめんね。てっきり名字に手を出そうとしてるのかと思ってたよ。」

「何が言いてぇんだ。周りくどい話し方しかできねぇのか?…ハッ、だから馬鹿との話は効率がわりーんだわ。」

敵連合といい、こいつといい、馬鹿は要約できねーから話が長ぇんだ。
端的に結論から述べろや。

「短気だから最後までお口チャックで聞けないんだろ?困ったなぁ。じゃあ、単刀直入に言わせてもらうよ。…名字は僕のだ。」

牽制か。
中学の時から、何度かこういう事をされた事はあった。大概、牽制してくるやつの好きな女に、俺は対して興味はなかったが。

「牽制かよ。ケッ、自信が無いやつは、ご苦労なこったな。」

クソ、時間を無駄にした。
ものまね野郎の返答には興味がねぇから走りだす。
あいつはついてこなかった。



物間に告白されてから、私の頭は混乱している。
そのせいで、最近の空き時間は、自分の部屋で過ごすことになってしまっている。
ほーっとしてるとあっちゃんに心配されるからなぁ。

好きってなに?
幼稚園の時とか小学生の時は、1番好きなのは、まーくん、2番目に好きなのは、たっくんみたいに淡い恋心はあった。
でも、中学生、高校生となると、中々簡単に好きな人はできない。気になるなって思ってても、相手に彼女が居たり。
かっこいいなって男子は…推し!って感じだったり。
好きって、LOVEってなんだろう。

「勝己君は、推し…だよなぁ。」

じゃあ、物間は?
友達っていうか。同じ中学から雄英目指すって珍しい事だったし、戦友って感じだなぁ。

『気の利いた言葉の一つも出てこないくらいには、ぼくは名字 名前に惚れてるよ。』

物間のことを思い出すと、あの告白がフラッシュバックする。
あんなの言われて、ドキドキしない訳ない。
ドキドキしない人は、きっと心臓の筋肉シックスパックだ。なに言ってんの私。

スマホの着信音がなる。通知は、物間だった。
今は、出れない。無理。
そう思いながら着信音を無視していると、一度切れて、もう一度着信音が鳴った。
…これ、出るまで鳴るやつだ。

「はい、もしもし。」

「あぁ、今大丈夫かい?都合が悪いなら、また掛けなおすけど。」

「えっ、いや、大丈夫だよ。どうしたの?」

「どっかの誰かさんが返事をくれないからね。進捗でも聞こうかなと思ったんだけど…。名字さ、今めちゃくちゃ意識してるだろ?」

図星を言い当てられて、ギクッとした。
思わず声が上擦る。

「っはぁ!?全然だし!」

「嘘だね、いつもより声が高い。フフッ、気分がいいなぁ。僕の一挙一動で、お前が慌てるのは。まぁ、もう少し考えてみてよ。…待ってるから。」

物間の変に勘が鋭いところが嫌いだ。通話が切れてからも、簡単にドキドキさせられる心臓を、もっと鍛える必要があるな、なんて思った。






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