かつきくん.




爆豪君はめっちゃかっこいい。
オラオラ系なのに色素薄くてどこか儚いところとか、
ストイックでビックマウスなところとか。
努力を惜しまないところとか。
筋肉質な身体とか、甘い匂いがする汗とか。

「かっちゃん!今日もかっこいいよ!推せる!!」

「うるせぇ死ねカス。」

「あしらわれすぎて…何かに目覚めそ…」

「きめぇ。」

ヒーロープロモーションビデオを作成するという経営科の課題で爆豪君にモデルを頼んでから、私はすっかり爆豪君の虜だ。

「お目線こちらにください!」

「死ねや。」

最初は無視していた爆豪君は、慣れてくるにつれて暴言を吐くようになった。
しおらしさのかけらもない。

「今日も爆豪のおっかけやってんのか?名字もよくやるなぁ。」

「切島君ってば!!そんなに褒められたら照れちゃうよ〜!」

「褒めてねぇぞ!」

「え、そう?」

毎日爆豪君を見にきてると、自然と切島君とも仲良くなった。
放課後も特訓しててえらいなぁ。

「プロモーションビデオ、できたんだろ?どうだったんだ?」

「もー、最高の出来だったよ!発表したらさ、女の子達もほっぺ赤らめててさー!やっぱ、被写体がいいと違うね!」

「そうか、よかったな!今度俺のも作ってくれよ!」

「いいよー!切島君かっこいいし、絶対漢気溢れるPV作るね!」

「おお!頼もしいぜ!!」

少し雑談をすると、切島君も特訓に戻っていった。
ちょっと寂しいけど、爆豪君を眺め始めると時間はあっという間に過ぎていった。


「おい、変態女。帰るぞ。」

「…んー…?」

「さっさと起きろ、そんでくたばれ。」

「起きたら永眠…!」

見学してる間に寝ちゃってたみたいだ。
見渡すと私と爆豪君だけで、二人っきり?美味しい展開だ。いまならなんだってできる。
起き上がろうとすると、身体が痺れてうまく立てない。

「かっちゃん、手ぇ貸して…?」

「きめぇ。あとかっちゃんって呼ぶな尚きめぇ。」

「痺れて立てないんだよー!」

そう言うと、爆豪君はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
そのまま私の足を掴む。え、推しからのお触りっ…って

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

痺れてる箇所を徹底的に押してくる推し。
だれが上手いこと言えと!痛い!

「かっちゃん離して!痛い!!!」

「呼ぶなっつってんだろ。クソモブ。」

ぐりぐりは悪意しかないよね!痛い!

「爆豪君、やめてください…」

少し上目遣いをしてみるけど、一向に手が離れない。
ワタシオンナノコ!コレ!セクハラ!

「勝己」

「え?」

「呼べ。」

手が止まった。と、思いきや再開される。
もう、痛い通り越して恥ずかしいってば!

「勝己!はい!もう離して!!」

「ッチ、しょうがねぇな。」

しょうがなくないよ。もう。舌打ちもかわいい。
そんでちゃんと手を貸してくれるのも紳士。
そのまま並んで歩く帰り道は、なんか恥ずかし嬉しい。
あ、韻踏んじゃった。

「爆豪君のPVさ、めっちゃ反応良かったよ!」

「当たり前だろ。カス。」

会話終わっちゃった…。

「変態女。お前、切島のも撮るんか。」

「んー、頼まれたからねぇ。まだ課題で出てないから、二年生なってからかなぁ。」

爆豪君が少し黙った。なんの沈黙だろう。
でも、お口にチャックしてるのかわいい。

「…そんで、クソ髪にもキャーキャー言うんか。」

え、なにそれ。ちょい拗ね顔?かっわ!!

「もう完全にやきもちじゃん!かんわいい!」

「うるせぇ!クソが!燃やす!!」

手にボウっと火がたったのを見て、ちょっと黙る。
でも、かわいい!推せる!投資する!と心が叫びたがってるのを感じながら、言葉を選んだ。

「私が、爆豪君にキャーキャー言うのはさ。爆豪君が特別だからであって。切島君がモデルになるからってキャーキャーは言わないかなぁ。」

「…そうかよ。」

いま、ちょっと笑った!レア!!ちょっと個性を使って、ばっちり撮る。こう言う時に、カメラの個性は役立つ。

「あと、勝己だろーがカス。」

「え?呼んでいいの?」

「かっちゃんって呼ばれるのが虫唾が走るからだわ。勘違いすんな。」

「かっ…」

その後、かわいいと叫んで爆破されるのは5秒後のことだった。










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