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勝己君と、どうこうなれるなんて、そんな希望的観測は無いけれど。
物間のまっすぐな気持ちを受け止めて、私も勝己君にまっすぐに気持ちを伝えたいと思った。

ねぇ、勝己君。
私が好きって言ったら、勝己君は困るかな。
なんとなくだけど、好きって言葉を聞いた勝己君は、眉間の皺をぐっと寄せるんだろうと思う。もう近寄るなとか言われるかもしれない。

「…それでも、好きって言いたいなぁ。」

勝己君が好き。恋愛対象として、好きだって知ってほしい。
そうと決めたなら、何か行動を起こさなきゃ!!
…と、メッセージアプリを開いて、言葉を打っては消して、打っては消してを繰り返して、もう一時間はゆうに超えた。
良い言葉が思いつかない。
気まずくなってしまった距離感では、どんなに言葉を尽くしても、勝己君に届くとは思えなくて。

考えることに疲れてしまって、現実逃避だ!と画像のフォルダを開く。
最近は写真をとる頻度が下がってしまっていて、最後に撮ったのは、あの青と赤の混じった空だった。
一つ前には、一緒に出かけた日の勝己君。
もう一つ前も、その前も…勝己君ばかり。
ストーカーかよ…とドン引きされてしまいそうな画像の数々は、私の目に映っていたもの。
だれかが、言っていた。
目は口ほどにものを言う…だっけ。ちょっと違うかもだけど。
このフォルダには、好き、大好き、そんな気持ちが詰まっている。

「はぁぁ…これ、勝己君の私服!!かっこいい…待って!文化祭のビジュ良すぎない?舌出してえっちだぁ…!!」

指で辿っているうちに、勝己君ばかりの画像が突然途切れる。勝己君と出会う前の画像まで遡ってしまったみたいだ。
スワイプをして、動画のフォルダへ。

「これ、」

動画には、勝己君を追っかけて撮ったシーンの数々…目に入ったのは、経営科の課題で出たプロモーションビデオだった。
初めて作ったプロモーションビデオは、勝己君の自主練の様子や、ヒーロー科の授業での様子を組み合わせて音に乗せたシンプルなもの。

「完成形、見せたっけ…」

たしか、勝己君には見せたことはなかったはず。
私が勝己君と知り合うきっかけとなった、この映像を、送ってみるのはどうか。きっと、いい口実にはなる。

映像と、少しの文を付け加えて送信ボタンを押した。
完成したの送らなきゃいけないって先生に言われてたの、忘れてた…とかなんとか。でっち上げた言い訳を並べた。
切島君が居たら、漢らしくねぇ!!と怒られてしまいそう。いや、そもそも漢じゃないんだけど。

すぐに既読がついて。
そこに畳み掛けるように、文字を打つ。
『本人からの意見聞きたいから、明日会えない?』
勝己君からの返事は、少しの間があって。

「編集点が雑。あとは無いって…。」

口実を見事に潰されてしまった。
やっぱり、勝己君は一筋縄ではいかない。
口実が使えないなら、とやけになってフリックを操作する。
『私が会いたいので、会ってくれませんか』
もう、これでダメなら諦める。そんな覚悟で送る指先は震えた。

『明日の昼休み。裏庭。』

簡素な返事は、勝己君らしいもので。
その言葉を聞いてすぐに、明日が待ち遠しくなってしまった。








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