欠点だらけの恋心#3



「おねえちゃん、おねえちゃん」
「…また汚したの?」

ぼくがかけよっていくと、おねえちゃんはすこしだけかおをしかめた。

「ご、ごめんなさい…」

おねえちゃんがぼくのまえにかがみこみ、ふくをてぃっしゅでふいてくれるあいだ、ぼくはおとなしくまつ。
なんだかさいきん、ものがじょうずにたべられない。まえはできたとおもうんだけど、いまはだめだ。
ぼくのへやにおいてあるほんは、ほとんどいみがわからない。むかしはよめたはずなのに、へんだ。たくさんあるおにんぎょうのつかいかたもわからなくて、りーだーにはもうにんむにいかなくていいといわれた。
りーだーはぼくのあたまがわるくなったのをおこって、おねえちゃんをしばらくろうやにとじこめていた。あいつは、ぜんぜんわかってない。おねえちゃんがぼくにわるいことをするはずがないのに。
おねえちゃんはとてもやさしくて、びじんだ。まえよりもずーっとながいあいだいっしょにいてくれるし、でーだらやひだんともあまりはなさなくなった。にんむにでかけないときにはぼくとあそんでくれて、たまにぎゅうとだきしめてくれる。ぼくはそんなおねえちゃんがだいすきだ。

「はい、これでいいよ。あと、別に謝らなくていいから」
「どうして?」
「だって、貴方は何も悪くないじゃない…」

いみがよくわからない。ぼくがじぶんでふくをよごしちゃったのに、どうしてわるくないんだろう。
ふしぎにおもってくびをかしげると、おねえちゃんはかなしいかおをした。りゆうはわからないけど、ぼくといるときときどきそんなめをするんだ。ぼくがまえみたいにかしこくなくなっちゃったのがいやなのかもしれない。

「おねえちゃん、どうしたの?さみしい?くるしい?」
「…そうかもしれないわね」

そふぁにしずみこみながら、おねえちゃんはなにもないかべをぼんやりとみつめていた。

「だいじょぶだよ。ぼくがいるよ」

おねえちゃんのてをぎゅっとにぎると、すこしつめたくなっていた。へやがさむいのかもしれない。
なんだかかわいそうだから、よくじぶんがしてもらっているみたいにぎゅうとだきしめてみる。
おねえちゃんはぼくのからだにしがみついて、かおをみえなくした。ないてるみたい。
このひとはなにもわるくないのに、どうしてかなしいおもいしなきゃいけないんだろう。わるいやつにいじめられたのかな。

「わ…、私の所為で、貴方は……」
「なぁに?」

ぼくはおねえちゃんのふるえているせなかをゆっくりさすってあげた。
なぜかおねえちゃんは、ごめんごめんとなんどもあやまってきた。やっぱりよくわからないや。
たしかにぼくはむかしのことをよくおぼえてないけど、おもいだしたいとおもってるわけじゃない。ぐちゃぐちゃとややこしいことをかんがえなくていいし、おねえちゃんはすごくやさしい。いやなことなんてなにもないのに、それじゃだめなのかな。

「ごめんなさい…ごめんなさいサソリ…」

なにがいけないんだろう。
ぼくはおねえちゃんがいてくれれば、それだけでじゅうぶんなのに。





20101123
企画『愛:9999kg』様へ

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