*夢主は烏野の一年生マネ設定*
「みょうじちゃんって赤葦のどこが好きなの?」
それは突然だった。
いや、確かに夏合宿の最後の夜くらいガールズトークっぽい恋バナをしようとは言っていたけども。
つい数秒前までは生川のマネさんの話をニヤニヤしながら聞いていたはず、なのに。
「は?」
なんとも間の抜けた音を発した口が塞がらない。
そんな私を他所に爆弾を落とした張本人は、あれ?違った?と首を傾げている。
いや、違くはないんですけど。
ちらりと周りをみると、緩みきった顔の先輩達と頬を赤くした谷地ちゃんが、いた。
「なまえちゃん赤葦好きだったの!?」
「みょうじちゃんが年上好きだったとはねぇ」
にやにや、にやにや。
私が赤葦先輩を好きだという話は先輩達のお気に召したようで。
「赤葦確かフリーだったはず。」
「狙い目ね。」
「赤葦くんって言われてみれば格好いいよね」
本人そっちのけでドンドン話が進んでいく。
むしろ本人の意思は無関係なんじゃ…
これが真のガールズトーク…?なんと恐ろし
い。
それでも、これまでの赤葦先輩を思い返すとやっぱり頬は緩んでしまう。ああ、これは重症かもしれない。
「あらあら」
「お熱いことで」
「やめてくださいよ。」
こう見えて私照れ屋なんですよ。そう言うとなに言ってるのと笑われた。
▽▽▽
「はぁ…」
夏の暑い日差しの中、私の溜め息が虚しく私以外、誰もいない水飲み場に響いて消えた。
結局、練習の時も、バーベキューの時も赤葦先輩と会話をする機会がなくて今の今まできてしまった。
あとは部屋に戻って、昨日のうちにまとめておいた荷物の再確認をしたらさよならするだけ。
「せめて挨拶くらいしたかったなぁ」
あわよくばメアドとかlineとか交換して、少しでもいいから仲良くなれれば…なんて考えてた昨夜の自分をひっぱたいてやりたい。
メアドどころか挨拶すらできないなんて。
なんて残酷なんだ。おお…神よ
信じてもいない神様に向けて文句を言っていたら、後ろで砂利を踏む音が。
そういや、猫がよく出るって言ってたような…
猫かなぁ、赤葦先輩だったらいいのになぁ。なんて呑気に振り返ると。
そこには、まさかの赤葦先輩がいて。
もう、どこぞの少女漫画だよと言いたくなるくらいの奇跡。
って。そんなことより、
「なんで、ここに…!?」
「マネージャーに訊いたらここだって言ってたから。」
え。それって、わざわざ探してくれたってことですか。
でも、なんで、
訳がわからなくて、頭がついていかなくて。
だけど取り敢えず恥ずかしくなって顔を俯ける。そんな私を見て赤葦先輩が小さく笑ったのがわかった。
「最後なのに。最後なのに一度も話さないでお別れとか嫌だった。」
「…え?」
「最後まで、優しくしてくれる先輩ポジションでいるのも嫌だった。」
私が戸惑って何も言えないでいると
みょうじってば鈍いから俺も大変だったよ。
と、くすくす笑ってくしゃりと髪を撫でられる。
なまえ、こっち向いて。
今まで聞いたことのない少し低くて掠れた色っぽい声で名前を呼ばれて、つい顔を上げてしまってから後悔した。
「なまえ、好きだよ。」
いつの間にか近くにあった先輩の顔。
少し薄い唇から放たれた言葉。
何時もの少し気だるげな優しい瞳ではなく、獲物を狙う猛禽類のような鋭い瞳の奥に見えた熱。
「なまえは俺の事どう思ってる?」
これじゃあどう足掻いたって、首を縦に振るしかないじゃないですか。
「…好きに決まってます。」
ああ。神様。
生まれて此の方あんたを信じた記憶はないし信仰もしてなかったしさっきまでは文句言ってたけど、今回ばかりはあんたに感謝するし信じてしまいそうです。
だって、大好きな赤葦先輩が私を嬉しそうに見つめてくれているんだもの。
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