今日は華の金曜日…!予定は…ない…いやあるっ家に用意してあるとっておきのワイン!それを飲みながら、楽しみにしていたDVDを鑑賞するのだ…!そのために仕事もさっさと終わらせた。少し悲しい!いや、悲しくない!
一人頭の中で悶々と繰り広げながら、就業のチャイムがなったと同時に席を立つ。と…行く手を阻むようにして赤葦さんが立ちはだかり、そっとこう言ったのだ。
「帰れると思ったんですか?帰しませんよ」
先日提出した企画書が、ミスだらけだから訂正しろということだった。え、そんなまさか…何度も見直して、余裕を持って提出したのに。
この締め切りは確か、来週月曜十時までだった。その日は午前中から、外出する段取りが組まれている。ということは…なんでこんな、ギリギリに…!く…っ!
悪いのは、ミスした自分だ。そう言い聞かせて、静かに席についた。
一人、二人と、職員は減っていく。そしてついに、フロアに私一人きりだ…うう…にしても、ミスなんか見当たらない…。人が近付いてくる足音がして、そちらを見る。再び現れた、私の行く手を阻んだ…っ!いや彼は悪くないのだ…でも…っ!
「あの、嘘です」
「……え?」
「ミスがあるなんて、嘘なんです」
嘘、うそ、uso…なんだって…なんだってええぇえ!!!てめぇおいコラ私の貴重な時間をああぁああ!!!って口には絶対出しませんけど。
「すみません」
「……………」
何故彼はこんなことをしたんだ。こんな嫌がらせして、楽しいわけ?私、何か彼の機嫌を損ねるようなこと、したかしら?
いくらその、少し顔が良くてスタイルも良くてく、悔しいくらいハイスペックだからって…すみません、で許される事と許されない事がある。今回の件は、私の中で確実に後者に該当する。
「でも…こうでもしないと、」
ギシッと私の隣の席に腰掛ける。
「こういうこと、出来ないと思って…」
私の右手に、自分の左手を重ねて来たと思ったら、指を絡ませて来た。え、え、思考がついていかない。これ、夢?
「怒ってます、よね?」
怒ってる、最近感じた中でもかなり高いレベルの怒りが、私の中にあった。あったのだ確かに。けれど今は、そんなもの何処かに飛んで行ってしまって。
「…あの、離して、」
「帰れると思ったんですか?帰しませんよ」
先程も聞いた台詞。今度のこれは、違う意味を含ませて響いてくる。囁くように、掠れて、妙な熱を帯びていて。夢なんかじゃない。帰れない。彼の甘い視線から、逃れられない。
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