バレンタイン


※2018年のショコラフェスイベのお話です。
読んでない方は若干のネタバレ注意です。

「「あっ…」」

誰もいないであろう、と思ってノックせずにドアを開けたのが悪かった。
思わず違う次元のドアを開いたらしい。
私は1度生徒会室のドアを閉めてノックして開ける。

「わざわざノックして再入室してくるな…度し難い…」

私の視線の先にはちょっと怒りながらも恥ずかしそうに頬を染める恋人、敬人の姿があった。
基本、眉間に皺を寄せている彼がそんな表情をするのは珍しい。
あまりの可愛さに少しニヤニヤしていると、デコピンをされる。

「痛っ…!」

「ななし…絶対俺のことを馬鹿にしているだろ…」

「してないよ!可愛いなって思っただけだよ!
…だから、ノックして入る前にやってたアレ、もう一度見せて?」

私がそう言うと敬人はツンとした表情でそっぽを向いた。

「…何のことだか知らんな」

「『バキュ〜ン』ってやってたのは誰?」

「………本当に貴様は…」

度し難い、と呟きつつ照れ隠しに眼鏡をクイッと持ち上げる。
実は、ドアを開けた瞬間に見たのは、ショコラフェスを意識してのファンサービスの練習だろうか、敬人が指を銃に見立てて「バキュ〜ン」と言いながら打つ真似をしていたのだ。

「ねえ、お願い」

「断る」

「…どうしても、駄目?」

私がお願いすると、敬人は少し考える素振りをし、何か思いついた表情をしたかと思えば、

「それならななしにファンサービスの指導でもして貰うか。
ということで、ななしに手本を見せて貰いたいんだが」

と言い出した。
つまりは、私に同じことをしろということだろう。

「私がしたら敬人もするんだよね?」

「………ああ」

苦笑しながら答える敬人に、絶対だよ?と念押しした。
深呼吸をして心を落ち着ける。

「ば、ばきゅーん…」

今の私は溶けてもおかしくないくらい体温が高い。
生きてきた今までで1番恥ずかしいかもしれない。
しかも、言い出した本人は何も言ってくれない。

「ちょっと…何かリアクションしてよ…」

恥ずかしさと何も反応のない敬人への苛立ちで、泣きたくなった。

「………あ、いや…なんというか…言葉に出来なくて、だな…」

羞恥のあまりに泣きそうな私を敬人がそっと抱き締めてくれる。

「あまりにも可愛らしくて……反応に困るんだが…
ななしに心を射抜かれた」

そう言った敬人の体温もとても高く感じた。
思わずキュンとしてしまう。

「じゃあ、敬人もやろう?」

「いや、俺は…」

「私の心は射抜いてくれないの?」

はぁ、と溜息をついた敬人は、1回だけだからな、と言った。

「バキュ〜ン……」

思わず思考が停止する。
生徒会副会長が「バキュ〜ン」なんてあざといポーズをするなんて。

「ねぇ、それ…他の女の子の前でもやるの?」

「…っ、も、もうしない…!!」

「いや、そうじゃなくて…可愛すぎて他人の目に触れさせたくないというか…」

「………なんだ、嫉妬か?」

「……だって、私だけがいろんな敬人を知っていたいんだもん…」

私がふてくされると敬人はため息をついた。

「…仕事だからな、俺が鬼龍や神崎の足を引っ張るわけにはいかないだろ。
だが、それほど俺を想ってくれるのは心底嬉しい」

そう言って敬人は私を優しくふわりと抱き締める。

「それに、俺がいくらファンにそういうことをしようとも、俺のななしへの想いは変わらないからな。
だから、安心して欲しい。
俺の心を射抜くのはななしだけだが、ななしの心を射抜くのも俺だけであればいい…」

普段言わないようなことを言うのはきっと、バレンタイン効果なのだとしたら、
やっぱりしっかりしてる彼も男の子なんだな、と思った。まあ、まだバレンタインは数日後だけどね。
さあ、当日はどうやって心を射抜こうか。
敬人の体温を感じながらそんなことを考えた。


バレンタイン


すっかり、放置してたよ。
もう季節外れですが。
ネタバレ注意とか書きつつ、今思えばイベ告知の時点で書き始めてた気もするぜ!
そして紅月は可愛いんだぜ!!!!

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あからこ

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