お酒と罠


※年齢操作あり。捏造あり。



夢ノ咲学院を卒業してから数年が経った。
学生当時はfineのプロデューサーとして活動していたため、久々にfine全員で集まろうという話になった。
卒業してからは、それぞれのアイドルとしての道を歩んで行ったため、暫く会っていなかった。
ただ、テレビにはよく映っているため、
数年ぶりに会っても久々に会ったという気はしないのだ。

「Amazing!ななしさん、とても女性らしくなりましたね…☆」

「本当だね。
ななしちゃんは前から可愛いと思っていたけど、今はもっと可愛くなったね。
今は恋人とかいないのかな?」

恋人か………
私の左右に英智さんと渉さん、
向かい側の席に弓弦君と桃李君が座っている。
ちらりと弓弦君の方を見ると目が合って、ニコリと微笑んだ。
学生時代から弓弦君に片想いを続けていたため、未だにこうして心臓がドキリとする。

「ああ、恋人!愛があって良いですね!Amazing!」

「…いや、ごめん。実はいないんだけど…」

「じゃあ、僕なんてどうかな?」

「…英智さん、近いです」

こうして会が始まって数時間、皆は既にお酒に酔っているようだ。

「ななし♪
僕も可愛くなったでしょ?えへへ」

桃李君はお酒を飲まないイメージだが、意外と飲むらしい。
どうやら、お酒に強い、というギャップを身につけたくて最近飲み始めたようだ。
そして本当にお酒に強い。
机越しに可愛らしい彼のピンク色の髪を撫でると嬉しそうに微笑んだ。天使か。
ふと、隣を見るといつの間にやら英智さんと渉さんは眠っていた。

「そろそろお開きですね」

向かい側の弓弦君がスマホで時間を確認する。突然立ち上がってお店の外へと出ていったかと思えば、数分後また戻ってくる。

「車を手配しておきましたので、皆様をご自宅までお送り致しますね」

眠っている英智さんと渉さんを起こし、起きている桃李君は自分で歩いてお店の外へ出た。
無事に彼らを車へと誘導し、車が出発したのを見送ると、弓弦君が私の方へと振り返る。

「ななしさん、これからお時間はございますか?」

「あ、うん!大丈夫」

「では、車を回してきますね」

そう言って弓弦君は駐車場へと歩いていった。
暫くして一台の綺麗な車が私の前に止まった。

「どうぞ、お乗り下さい」

「失礼します…」

私が乗ってシートベルトを締めたのを確認すると発車させた。
そもそも弓弦君が自身の車を持っているのを知らなかった。
ああもう、運転してる横顔もかっこいい。

「弓弦君、これからどうするの?」

「少しお付き合いして頂きたいところがございます」

そのまま車を走らせ、付いた場所は落ち着いた建物の前だった。

「ここは…?」

「私の自宅でございます」

何故突然彼の家に連れて来られたのか、
何があるのだろうか、
全く理解出来ず固まっていると、
弓弦君からどうぞ、と家に入るよう促される。
弓弦君は優しいし、襲ったりする様な人じゃない。
それに私たちはそういう関係じゃないんだから、やましいことなんかない。
玄関であろう入口から入るとそこにはカウンター席とずらりとお酒が並んだ棚、ワインセラーまであった。まるで小さなバーのようだ。

「わぁ…凄い…」

思わず感動して声に出た。
そんな私を微笑ましく見つめる弓弦君の視線にドキドキしてしまう。

「少しご一緒に飲みませんか」

ここまで連れてきてもらって飲まないのも失礼だ。

「じゃあ、ちょっとだけ」

そう言うとカウンター席に座り弓弦君が注いでくれたお酒を飲んでみる。やはりこれだけのお酒を持ち、味を知っている弓弦君が勧めてくれただけあって、美味しい。
これは何杯でもいけるかもしれない。
弓弦君も既にグラス3杯は飲んでいる。
少し火照っているのか顔が赤い弓弦君は凄く色っぽく見える。

「ななしさん」

「ん?」

「恋人がいないって、本当ですか?」

唐突な質問に私は危うくグラスを手から滑らせそうになった。
ずっと弓弦君が好きで今でも引きずっているんだもの、恋人なんかできるわけがない。
なんて、本人には言えない。

「本当だよ。
……まあ、ずっと前から好きな人がいるんだけど未だにその人のことを引きずってて、なかなか恋愛出来ないからなんだけどね…」

私なりの小さな小さなアプローチ。
次会うときがいつか分からないから、これくらいのアプローチなら別にいいだろう、と勝手に自己満足できる理由をつけた。

「…そんな恋愛は素敵ですが、現実的に考えますと非効率だと私は思います」

「…え?」

これは弓弦君なりの「ごめんなさい」なんだろう。
お酒が回ってきたせいか、感情にブレが出てきた。
ボロボロと涙が零れる。
すると、弓弦君はハンカチを出し私の涙を拭った。
なんで優しくするの?もうやめてよ。
そう言おうとした時、気付けば私は弓弦君の腕の中にいた。

「…すみません、泣かせるつもりでは…。
ですが、私ならななしさんを笑顔に…幸せにする努力は怠りません。
ななしさんが想っている人を忘れさせるよう努力致しますので、
私の恋人になってくださいませんか。
私はずっとななしさんをお慕いしておりました」

突然の告白に私は唖然とした。
いや、まさかそんな。
これは両想いなのか。

「あの…弓弦君。
私の好きな人が実は弓弦君だ、って言ったらどうする?」

私が言うと弓弦君は目を見開いた。

「私ね、ずっと弓弦君が好きだったんだよ」

えへへ、と笑って恥ずかしいのを誤魔化してみる。
すると、弓弦君は嬉しそうに私の手の甲に口付け

「残念ながら時間みたいですね」

そう言って時計を見る。
気付けばもう真夜中だ。

「終電、もう行ってしまいましたね。
残念ながら私も飲酒しております故、車もお送り致しかねます。
宜しければ、どうぞお泊まり下さいませ」

差し出された彼の手を取り私は彼と一夜を……ううん。
これから先の未来を共にするのだった。


お酒と罠

彼の罠に引っ掛かったら一生離れられなくなった


弓弦君は策士だろ、と思って書いた。
昨晩書いた弓弦君夢が納得いかず、
ネタ帳に入れていた前から書きたかったシチュで書かせていただきました。
本当は強引にぐいぐい行ってくれてもいいんだけど…。
でも、ナチュラルに終電を逃させて一夜を共にさせつつ、最終的に伴侶にする弓弦君とかどうですか?
つか、最初のfineメンバーの必要性が曖昧ですが、
きっと弓弦君は英智とかに嫉妬してたんだと思う。

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あからこ

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