王子と姫君


待ちに待った大好きな彼との初めてのデートの日。
彼にとっては私なんて庶民のうちの1人の女の子だったであろうはずなのに、何故か告白された。
愛らしい声で『ななしお姉様』と呼んでくる彼に私は出会った時から惹かれていた。だから、告白の返事は即OKだった。
告白されたときを思い出すと照れくさくて思わず笑みがこぼれる。
さあ、早く支度をしなくちゃ。
可愛らしい服に新しい靴、全て今日のために買ったのだ。
急いで支度を終えて待ち合わせ場所へ向かう。
すると、もう既に彼の姿があった。

「おはよう、司君!」

私が声をかけると、私に気付いた彼…司君はとても嬉しそうに微笑んだ。

「ななしお姉様、おはようございます。
……とてもcuteですね、よく似合っていらっしゃいます」

「…っ!」

こういうこともサラリと言うんだから、照れずにはいられない。
逆に恥ずかしがり屋な私は未だにそんなこと言ったことがない。

「あ、ありがとう……遅くなってごめんね。
とりあえず、行こうか?」

「はい、ななしお姉様」

私が恥ずかしがり屋なのは司君も承知しているため、褒められた後ぎこちなくなってしまう私をただただ笑顔で見守ってくれる。本当に優しい子だ。

「じゃあ、今日は司君が行かないようなところに行くんだっけ?」

「はい、一般的なcoupleがどこにdateしに行くか、興味がありますね」

「そっか、とりあえず───」

キューグルグルグル……

謎の音が鳴った。
ちらりと司君を見ると恥ずかしそうにお腹を押さえている。

「司君、お腹減った…?」

「はい……でも、お昼まで我慢できますから大丈夫ですよ」

お昼までまだ時間がある。
手軽な軽食でも食べようか。
そう思って最初に向かったのはクレープ屋さんだった。
ケースの中のサンプルを司君は驚いたように見ている。

「種類がたくさんですね。
どれも美味しそうなものばかりで迷ってしまいます…」

「あ、ならお互い違うのを頼んで味比べしてみる?」

すると、司君は私を見て

「いいんですか!?」

と目をキラキラさせながら言った。
あまりの可愛さに私の胸はキュンとしてしまう。
数分後、出てきたクレープに司君はMarvelous!と言ってとても喜んでくれた。
その後もデートを続け、様々な場所を歩き回った。

「司君、次はどこに行く?」

私が問いかけると、司君の表情が曇っている。

「ななしお姉様、少し休まれませんか?」

「え?あ…うん」

司君に言われ、私は近くにあったベンチに腰を下ろした。

「ななしお姉様、少しこちらでお待ち頂いてもよろしいでしょうか?」

私が頷くと司君は駆け足でどこかへ行ってしまった。
きっと飲み物でも買いに行くのだろう。
しかし、数分経ってもなかなか帰ってこない。

「…司君まだかなあ」

私、置いていかれちゃったのかもしれない。
いや、でも優しい彼はそんなことをしないだろう。
もしかしたら、不良とか悪い人に絡まれちゃったのかもしれない。
もしそうなったらどうしよう…!?
グルグルと頭の中で考えていると、紙袋を提げた司君の姿が見えた。

「お姉様、遅くなりました……」

「ううん…!良かった…無事何もなくて」

「私もななしお姉様に何事もなくて良かったです…
ひとりにしてしまって、すみません。
実はこちらを買いに行っておりまして」

紙袋から箱が出てくる。
箱を開けると可愛らしい靴が出て来る。

「ななしお姉様、足に触っても大丈夫でしょうか…?」

申し訳なさそうに言う司君に、私はいいよ、と答える。
すると、私の靴を脱がし司君の指が私の足に触れる。

「あっ……!!」

「お姉様…!!すみません………はい、これで大丈夫ですね」

司君が触れたのは、慣れない靴によってできた靴ズレした所だった。
そこに買ってきてくれたであろう絆創膏を貼って応急処置をしてくれたのだ。

「…靴ズレしてるの、よく分かったね」

「ななしお姉様を見てると分かりますよ。
…あと、こちらは私からのpresentです」

さっき箱から出した靴を履かせてくれる。
驚くことに私の足にぴったりだ。

「なんだか、シンデレラみたい…」

私がポツリと呟くと、司君はクスリと笑って

「私にとってななしお姉様はシンデレラ…princessそのものですよ」

私の手を取って手の甲に口付けた。


王子と姫君

私にとって貴方は騎士ではなく王子様


あまり、司君がどんな感じなのかまだ掴めて無いところではありますが、
靴ズレして新しい靴を履かせるシチュエーションは灰かぶりイベの時から書きたいと思ってました。
騎士というより王子様をして欲しい。

[前] | [次]
もどる

あからこ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -