温かい温度
────ドンッ
校舎の曲がり角。
鈍い音がすると同時に体に痛みが走る。
「ななし!怪我はないか…?」
ぶつかって転けた私に手を差し伸べる北斗に慌てて、大丈夫だよ、ごめんね、と謝る。
「いや、俺の方こそ、すまない。
立てれるか?」
そう言って私の手を掴み私を起き上がらせてくれる。
彼はクールで正直初対面のときは少し冷たいんじゃないか、なんて思っていた。
しかし、全然そんなことはなく、心は誰よりも温かくてお日様みたいだと思った。気付けばその温かさに惹かれていた。
北斗は冷え症だから手は冷たいけど、
きっと『手が冷たい人は心が温かい』ってやつだ。
根拠の無い噂だが、北斗の冷たい手に触れると本当にそうかもしれない、なんて思った。
そんなことを考えているとちょっとにやけてしまう。
「ん?どうした、ななし?
突然笑われると、正直不気味なんだが…」
不思議そうに見る彼に
「ううん、何でもないよ?
ただ、北斗のそういう優しいところ好きだなって思って」
私がそう言うと
「………何をいうかと思えば…」
口元を手の甲で隠しつつため息をつかれる。
頬を赤らめているのは真っ赤な耳を見れば一目瞭然である。隠れてないけど彼なりの照れ隠しだ。
そっと、北斗の手を口元から離し、北斗の唇に口付ける。
「…なっ」
熱を持った彼の唇から離れたタイミングで予鈴が鳴り響く。
「あ、予鈴だ…」
「………教室に戻るぞ、ななし」
私の手を取って早歩きで私の前を歩いていく。
冷たいはずの彼の手は、熱を帯びた彼の唇の様に温かかった。
温かい温度ほら、やっぱりそういうところ好き。
ホッケーは大人びてるけど恋愛経験はなさそう。
うぶな感じで、女の子に翻弄されてたらいいと思います。
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