ワスレナグサに想いをのせて


休日、私は街を歩くと、花屋さんを見つけた。
ふと、気になって足を運ぶ。
花が好きだ。
いい香りはするし、可愛いし、見てて癒される。
特に買う予定はないけど、少しでも高貴なあの子に近付くために、そういうのも嗜んでもいいかな、なんて考えてみたりする。

「いらっしゃいませ」

花屋に一歩踏み入れるとふわっと甘く優しい花特有の香りがする。
店内に色んな花があり、思わず見とれてしまう。

「ななしお姉様…?」

聞き覚えのある声に私はハッとして声の主を見る。
年下だけど、しっかりした私の憧れの男の子。
……正しくは、私の好きな男の子。

「司君、こんにちは。
お花買いに来たの?」

「ええ、my roomに飾りたいと思いまして。
花を見てると癒されますので。
ななしお姉様も何か買いに来られたのですか?」

「えっと、そうだね。
プレゼント用の花束を買いに…」

よく分からない見栄を張って咄嗟に嘘をついてしまった。
マーベラス!とキラキラした目で見つめてくる彼を見ると罪悪感に苛まれる。

「ななしお姉様はどのような花束を贈られるのですか?」

「えーっと……う、まだ迷い中で…」

私が視線をはぐらかしながら言うと、司君はなにか思いついたような表情をする。

「ななしお姉様、お任せ下さい。
私がお姉様の贈り主に相応しいflower giftを選んで差し上げます」

にっこり微笑む彼にありがとうと言って苦笑するしかなかった。
もう、いっそのこと部屋に飾ろうか。うん、そうしよう。



「手始めに質問致しますが、ななしお姉様はどのようなお花を入れたいでしょうか?」

「うーん、そうだなあ…」

とりあえず店内にある綺麗だと思う花の名前を述べてみる。

「なるほど………では、こちらと、こちらと………ですね」

すると、司君は几帳面に手帳にメモをする。

「では、こちらの花を入れてみてもいいかもしれませんね」

司君がオススメしてくれたのは、ワスレナグサだった。
花は好きだけど、名前がそれぞれ分かるという訳ではない。
知識は乏しい方かもしれないが、ワスレナグサは知っている。
私が選んだ花で作る花束にちょこんと入れると良い色合いになるらしい。

「じゃあ、入れようか」

とりあえず、これで花束を作って貰うことにした。
店員さんに選んだ花をお願いする。

「少しお時間をいただきますね」

にこりと笑って店員さんは花束を作り始めた。

「どんな花束になるか楽しみだなあ」

「そうですね、お相手の方もきっと喜びますよ。
私もななしお姉様が選んでくださったflower giftなら大喜びしますね。
寧ろ私が頂きたいくらいです」

にこにこと笑う彼は本当に心臓に悪いくらい綺麗だ。
どんな花にも負けないくらい可憐で美しい。

「お待たせ致しました」

店員さんが花束を持ってくる。
綺麗な花が揃って纏まると尚更綺麗だ。
代金を払い外へ出ると、司君が花を持っていないことに気付く。

「あれ?司君何も買ってないけどいいの?」

「ええ、とりあえず今回は見てるだけで癒されましたので」

では、そろそろ失礼致します。と言って彼は帰路へ向いた。

「あ、あの…司君…!」

「お姉様、どう致しました?」

ただ、まだもう少し彼といたい。そう思ったら自然と彼を呼んでいた。

「あ、えっと………良ければこの花束をどうぞ…」

話題があまりにもなく、咄嗟に出てきた言葉。
ああ、失敗した。これで迷惑だ、なんて言われたらどうしよう。

「…え?でも、お姉様…これは贈られる相手がいるのではないのですか…?」

「いや、ごめん…………その、本当は────」

渡す相手なんていなかった、正直に言おうとするものの喉で言葉が突っかかる。
今日のことが嘘だとバレたらきっと私のことをあまり良くは思わないだろう。
すると、黙り込んだ私の手から司君は花束を受け取る。

「ななしお姉様…私、とても嬉しいです。
大切に致しますね」

司君は、にこりと笑って失礼致します、と再び私に挨拶すると帰っていった。
ああ、私の想い届いたらいいのになあ。
なんて、都合よすぎかな。


ワスレナグサに想いをのせて
花言葉は、真実の恋。

(お姉様は花言葉をご存知なのでしょうか…
私が選んだとはいえ、花言葉の意味を考えると少し恥ずかしいです)

らこめちゃんがワスレナグサを育てたいと言い出したので、ふとインスピレーションがわいたので書いてみました。
司君難しいよう。

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あからこ

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