アニマルガール


※アスレチックイベのお話



「大神が羨ましい…」

モルモットを手懐ける大神君を見て敬人が呟いた。
いつもキリッとした生徒会副会長の威厳は全くなく、
愛らしさを感じた。
プロデューサーになって敬人を見てきたけど、ここまで頬を緩ませた彼を見るのは初めてだ。
遠目から見ていると、

「随分頬が緩んでるな」

振り返ると、同じく紅月の一員、鬼龍紅郎がヤギを引き連れて立っていた。

「だって、可愛い…」

「まあ、確かに動物は癒され……
あ、ななしは動物じゃなくて、蓮巳の旦那が可愛いのか…?」

余計な一言によって私の体温は急上昇する。

「ちょっと……もう!!敬人に聞かれたらどうするのよ……」

「ああ、悪ぃな。聞こえてねぇはずだから安心しな。
まあ、あからさまにこれだけ大好きオーラ出しときゃ、普通は気付くけどよ…。
寧ろ、ななしが蓮巳の旦那を好いてることを知らない奴はいないんじゃねぇか?本人を除外してだけどよ。
…蓮巳の旦那は本当に色恋沙汰には疎いな」

そんなに私は分かりやすいのだろうか。
それにしても確かに敬人は恋愛には疎いと思う。
寧ろ興味無さそう。

「とりあえず、そんな遠くから見てても何もねぇぞ。
それに、俺たち3年はもう卒業だ。
想いとか伝えなくていいのか?
…一緒に動物に触るとかしてくればどうだ?」

溜息を吐いて彼はヤギの散歩に行ってしまった。
再び敬人に視線を戻すと、相変わらずモルモットに触れよう必死になっている。
反対に大神君は肩や手に沢山のモルモットが乗っている。
彼らを見ていると私もモルモットと戯れたくなった。
…でも、私邪魔にならないかな?
勇気を出して2人に近づく。
すると、敬人が先に私の存在に気付き、
声をかけてくれる。

「どうした、ななし。
貴様もモルモットに触りに来たのか?」

「え、あ…うん!」

ひょこっと敬人の隣にしゃがみ込む。
敬人はモルモットに触れようとするものの、
モルモットは彼の手を避けるばかりだ。

「ったく、だからテメ〜は構いすぎなんだよ」

大神君に説教される敬人…なんだか、変な感じだ。

「……はぁ、俺が構い倒しても問題ない動物がいたら教えて欲しい」

少し肩を落とす敬人を私はどうすることもできず、
とりあえず頭を撫でる。
意外とさらさらした髪だなあ、と思っていると
敬人が驚いた表情で私を見る。

「あ……ごめん」

少し気まずくなり、敬人の頭から手を離す。
すると大神君が何か思い付いたように口を開いた。

「そういや、テメ〜が構い倒しても問題なさそうな動物、思い出したぜ」

「…!!なんだと…!!」

大神君の言葉に食い付き気味で敬人が尋ねる。
すると、ニヤリと笑った大神君と私の目が合った。

「いるじゃね〜か、隣によ」

「…隣?」

「ああ、まあ、なかなか大きな哺乳類だけどよ?
…お利口な先輩ならわかるだろ〜よ?
ま、俺も他の動物見てくるか」

そう言って大神君はどこかへ行ってしまった。

「…隣?」

ちらりと敬人が私を見る。
ああ、なるほど。
きっと、大神君が言いたかった動物は
人間の私だ。

「俺の隣にはななししかいないじゃないか………………ん?」

哺乳類でなかなか大きめ(動物としては)と、合点が敬人の中でもいったのだろう。
凄く複雑な表情をしている。

「え、えぇっと…」

凄く言い訳を考えたいのに答えが出ない。

「あとで詳しく聞かせてもらう」

答えが出ず、黙り込んでしまった私にいつになく厳しそうな表情で彼は言って撮影が終了した。

「あ…終わった…」

撮影も恋も終わりの終止符を打たれ、正直泣きたい。
最後の最後で、片想いしている相手から説教か。
きっと、大神君に私が変なこと吹き込んだとか勘違いされてるんだろうなあ。
撮影スタッフが全員帰った後、敬人から人気のない建物に呼び出された。

「あ、あの………すみませんでした」

「説教をするためにななしを呼んだ訳じゃない。
そもそも、ななしは何も悪いことをしていないだろう?
寧ろ謝るのは俺の方だ」

「へ?」

敬人だって悪いことをしてないのに、私なんで謝られているんだろう?
キョトンとしていると、溜息をつかれた。

「まあ、その……貴様の…ななしの気持ちに気付かなくてというか……いや、気付いていたのだが…
俺はどうもこういうのは初めてでな…」

えっ…え?
私の気持ちに気付いてた?
と、いうことは────

「私が敬人のこと好きなの…バレてる?」

「…すまない。
知ってて返答をしない、というのは失礼だが、
好かれているという噂だけで、返答をするのは自意識過剰かもしれないと思ってな」

「いや、私告白してないから返答しなくて当然なんだよ?
だから、ほら。敬人は悪くないよ?」

几帳面で、真面目だから彼は思い詰めてしまうんだ。
最後に真実を敬人の口から聞けて良かった。
きっと、言うのは勇気がいることだったのに。

「……好きだよ、敬人」

ならば、私もありったけの勇気を持って想いを打ち明けよう。
玉砕覚悟で私は告げた。

「………俺もだ、ななし」

「…っ!」

正直あまりの嬉しさに言葉が出ない。

「け、敬人…」

「なんだ?」

「私、構い倒しても問題ないから!
だから………えっと、いつでも構ってね!」

そう言うと敬人は嬉しそうに私の頭を撫でた。


アニマルガール
動物としてじゃなくて、彼女として可愛がられたい

イベント見た時から
「じゃあ私という哺乳類なら構い倒しても問題ないんですけど、どうですかね?」
みたいなのは考えてました。
久しく書いたからグッダグダ。
オマケみたいなの(多分ちょっと危ない会話)を日記の追記にでも書けたらなと…(小声)

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あからこ

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