ゆびきりげんまん
「よし、ゲームセンターに行こう。
行きたい人は放課後来てね。
あ、ちなみにななしちゃんは、強制参加だから、誰も行く人が居なかったら俺とデートってことで♪」
休み時間、教室で大きな声でクラスの人々の方に向いて呼びかける羽風君。
この呼び掛けがきっかけで、3-Aのメンバーはゲームセンターに行くことになった。
放課後、私たちは校舎を出てゲームセンターへと向かう。
わいわいがやがやと先ゆくクラスメイトの後ろを私と敬人がついて行く。
「しかし、羽風…人の彼女とデートなど、よく堂々と公言出来るな……」
私の彼氏である敬人は本日3-Aの保護者的な存在で出席しているらしい(本人談)。
今のぼそっと呟いた言葉を聞く限り、
自惚れかもしれないけど、出席理由はそれだけではない気がする。
何はともあれ、敬人とデートすることはあまりなく、
デートしたとしてもお家デートというやつだ。
だからこうして敬人と出掛けられるというのは少し嬉しい。
「おい、ななし」
「どうしたの」
突然立ち止まり、背の高い彼は少し屈んで私の耳に顔を近づける。
「羽風がななしに何をするか分からん。
くれぐれも俺の傍を離れるな」
小さな声で言うと再び歩き始めた。
うわ、何それちょっとどころか、めちゃくちゃ嬉しい。
保護者として、というよりも私のことが(主に羽風君的な意味で)不安だから来たのかな、と思うと愛を感じた。
ゲームセンターにつくと、みんなでシューティングゲームを始める。
「うわ…みんな凄いな……」
「ななしもやってみるか?
共に悪を倒そうではないか…☆」
ゲームの銃を私に差し出してくる守沢君。
「じゃ、じゃあ、物は試し…ってことで…」
銃を受け取り、守沢君とシューティングゲームをすることにした────が、
「ああああああああああ!待って!無理!!」
「落ち着いて頭の弱点部分を狙え!」
迫り来るゾンビたちがあまりにも気持ち悪くて怖い。
「やだやだやだ!来ないで!!」
そんなことを言っている間にゾンビの攻撃でライフが減っていく。
正直昔は怖かったけど、
このくらいの歳になればゾンビ系とかいけると思ってたのに。
ごめんなさい、怖いです。
そんなやや半泣き状態の私の手から銃が背後から奪われる。
「後は俺に任せろ」
後ろを振り返ると、真剣な表情をした敬人だった。
いつもに増してかっこよく、
しかも怖いものが苦手な私を気遣って助けてくれるところにキュンとしてしまう。
こうして、楽しんでいると時間はあっという間に過ぎてしまい、外は薄暗くなっている。
「まだまだいける人ー?」
羽風君の呼び掛けに殆どの人が手を挙げるものの、
敬人だけは手を挙げない。
「俺はまだ学校に用事があるからな」
「そっか、ななしちゃんは残るよね?
俺たちの保護者が居ないと蓮巳くんだって心配でしょ?」
私はどうすればいいか分からず、敬人と羽風君の顔を交互に見る。
「えっと、私は───」
「ななしにも用事を手伝って貰う。
だからななしも連れて帰る」
私が曖昧な答えを出す前に敬人が答えてくれた。
用事というのが私も理解はしていないけれど、
きっと生徒会の仕事かな。
そのまま私たちは残っているクラスメイトにまた明日、とさよならの挨拶をした後、ゲームセンターを出て、学院へと戻った。
「お手伝いすることある?」
「特にはないが」
用事を手伝って貰う、と言っていた本人が連れてきておいて、手伝うことは無い、なんてどういうことなんだ。
私たち以外誰も居ない生徒会室。
暇な私は仕事をしている敬人を見ながらみんなまだ遊んでるのかな、とぼんやり考える。
すると、カチャリと突然ペンを置いた音がする。
「ななし、少し屈め」
椅子に座っている敬人より立っている私の方が少し高い。
きっと、またゲームセンターに行く時みたいに何か内緒話みたいなのをするのだろうか。
そう思いつつ屈むと、敬人と同じくらいの目線になる。
少し瞬きをすると、ふに、と私の唇に彼の柔らかい唇が重なる。
「……っ!?」
慌てて唇を私から離すと、
敬人はしてやったりみたいな顔をしている。
なにそれ、ずるい。
「ななしにあんまり構ってやれなかったと思ってな」
ちょっと上から目線でいう敬人だが、
きっとこれは敬人自身が寂しかったのだろう。
今日は敬人がガードしようと思っても3-Aのクラスメイトが四方八方から話しかけてくる、
そんな状況だったからだ。
「…ね、敬人。
今度は2人でゲームセンター行かない?
あ、ゲームセンターじゃなくてもいいから、
私とデートしませんか?」
私が問いかけると、いいだろう、といつもの真面目な顔で敬人が答える。
ただ、いつもよりも自然と口角が上がっていることに彼自身は気付いているのだろうか。
私が小指を出して、
「約束ね」
なんて言うと、ああ、と短く返事した敬人と、
小指を絡めて約束を交わした。
ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます!
懐かしいフレーズが生徒会に響いた。
リクエストで頂いたガンマンの話を書きたかったのですが、
その辺りのストーリーを読んでなくて、勝手に自己判断で書きました。
続きます。
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