それは入浴時のことだった。
「…どうしたんだ小平太?やけに静かだな。」
留三郎のこの言葉に文次郎、仙蔵、長次、伊作の4人の視線が一斉に小平太へと集まった。
皆気にはなっていたのだ。
あの暴君と名高い小平太が、
いつも浴槽の中の湯が無くなるのではという勢いで泳ぎ回る小平太が何やら物憂い気に顔を伏せていたのだから。
「体調でも悪いの?」
「悩みでもあるのか?」
各自が次々と問いかけるも中々と口を開かない小平太。
6年間をともに過ごしてきた5人でさえ、こんな様子の小平太は見たことがなかった。
そんな中、「…実はな、」と小平太は重々しく口を開く。
彼の面持ちに一同は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「…菖蒲の、おっぱいについてなんだ。」
その瞬間、文次郎が小平太の頭を打ったことに抗議する者は誰もいなかった。
「珍しく深刻な顔してやがるから何事かと思っただろうがっ!!」
「私にとっては深刻な問題なんだぞ!」
反論する小平太の剣幕に一同はたじろく。
だが、先程のセリフのどこに深刻さを感じろというのか。
確かに話を最後まで聞かずに手を出したことには非があったかもしれない。
そこは反省するが、正直言って話を最後まで聞いたところで碌なことがないと思うのは自分だけではないはずだ、と文次郎は思う。
「ならば話してみろ。」
そう言って仙蔵が小平太の話の続きを促した。
「あぁ…。」
小平太の表情は真剣そのものだ。
「実はな、今日偶然にも菖蒲の胸に触れたんだ。」
偶然ってどんな偶然だよ。
と、怒りを覚える一同だが、何とかそれを抑え込む5人。
「するとな、」
中々と核心にたどり着かない。
一同はさっさと言え、と続きを促した。
「なかったんだ。」
「何が?」
「おっぱいが。」
「「「「「・・・・・」」」」」
先程までの苛立ちも忘れ、騒然とする一同。
皆、呆気にとられていた。
「…ない、ってことはないだろう。」
「ほんとに…なかったんだ。」
「…サラシとか巻いてるのかもしれないし。」
「おぉ!その可能性があったか!」
「そっか…、こへは巨乳派だもんな。」
「それを言うならお前らもじゃないのか?」
仙「私は美乳派だ。」
伊「僕もかなぁ。」
留「俺は小さい方がむしろ…。」
長「…。」
仙「ああ、文次郎は巨乳派だったか。」
文「…うるさい、バカタレ。」
何やかんやと言っても彼らも健全な男なのである。
つづく?