「名は私のことが嫌いなのか?」 『嫌い。』 「そんなにあっさり酷いなぁ…。」 私はいつだって名だけが好きなのに。 …なんて嘘ばっかり。 私がいつもどんな気持ちで三郎の帰りを待っているか。こうやって私の手を掴むこの手、この腕でどれだけの町娘の肩を抱いたのか。 そんなドロドロとした私の嫉妬なんて見透かしたように三郎は微笑む。私は名だけのものだと言う。 『私、知ってるの。』 「何を?」 『分かってるくせに。』 酷いのはいつだって三郎の方。私は三郎の事が大好きなのに。 こうやって私の事を追い詰めて、グスグスと泣き出す私を三郎は愛しそうに抱きしめる。愛してる、と耳元で囁く。 『この浮気者。』 もう何度目になるか分からないこの台詞。 「…だから私の事が嫌いか?」 嫌いになるはずがないんだ。でも口にはしない。心の中で思うだけ。だけど、私がそれを言うまで三郎は許してくれない。射抜くような鋭い視線を私に向けるのだ。 三郎が好き。だからこんなことはもう止めてほしい。 そうやって私が嗚咽混じりに、すがり付くように呟けば、三郎は私をギュッと抱きしめる。 名、と私の名前を呼んで、首筋に顔を埋めるのだ。 「名、こっち向いて…。」 三郎は私の唇を噛み付くように吸った。 いつも三郎の接吻はとても激しくて、私は舌を絡めとられて息が上手く出来なくなる。 ん、と苦し気に息を漏らして、三郎の頬に手を伸ばしせば、やっと三郎は口を離してくれて、私は大きく息を吸い込んだ。 私たちの唇の間で、どちらのものかも分からない唾液がプツンと切れた。それに私は妙な恥ずかしさを覚える。 「…ごめん。これからは気をつける。」 その言葉に頷きながらも、それが嘘だと私は分かってる。 「『好き。』」 ( 螺旋状の想い ) お互いを求める心は同じ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐ ナミハさんリクエスト。どうもありがとうございます! 名さんに嫉妬されることに愛を感じるヤンデレ三郎…になりましたでしょうか? 本当は名さんの事が大好きで浮気なんてしたくない三郎と、そんな三郎の気持ちを分かっていながらも浮気されるのは悲しい名さんです。 |