私は今日、忍術学園へと入学することになった。 少々ガサツな性格の私。 両親の言葉によると、しっかりと勉強して素敵な淑女となって帰ってくるように、とのことだ。 はっきりとは言わなかったが、人見知りである私のコミュニケーション能力を向上させることも含んでいるらしい。 荷物を背負い、父と母に見送られ私は家を出た。 期待半分、不安半分といったところだろうか。 忍術学園での暮らしに興味はある。だが、先程にもちらりと述べたように私は人見知りなのだ。 知人が一人もいない見知らぬ場所で上手くやっていけるのかという不安がどうしても拭い切れなかった。 ギャップ。 世間にはそんな言葉があるらしい。 私はどうも勘違いされやすい質のようで、親しくなった人に「第一印象と違う。」、「意外だ。」と言われることが常だった。 真面目、クール、上品。 実際の私はそんなんじゃない。 クールに見えるのはチキンで言葉数が少なく元来の表現が乏しい表情のせいで、上品なのは緊張のあまり人の目を気にして行動しているだけで。 私はそこで溜め息を一つ。 そんなこんなと癖である物思いに耽りながら、私は学園へと続く道を歩くのだった。 学園に到着してからは、学園長先生の入学の挨拶、軽い注意事項や担任の先生による学園の案内。 それらを終え、私は自室へと向かう廊下を歩きながら息をついた。 くのたまは忍たまに比べて数が少ない。 相部屋となる者もいるが、基本は一人部屋を与えられることが多く、私は一人部屋を頂けるとのことだ。 障子を開け、部屋で一人になると、張りつめていた緊張の糸が切れたように座りこんだ。 ああ、これじゃダメだ。と、思いながらも今まで約10年間で形成された性格はそう簡単には治らない。 ここには家族もいなければ、近所の友人もいない。 はやくも心細さのあまり、泣き出してしまいそうだった。 …いけない、いけない。 ズッと鼻を鳴らして自分に言い聞かせた。 この学園に通うことは自分で決めたことでもあるのだ。 こんな泣きごとばかり言っていては学費を出してくれる父や母に申し訳がたたない。 私は変わってみせるのだ、と。 そう意気込んだ私は早速荷物の整理へと取りかかった。 ( 桜咲く季節のことでした ) |