私、三条菖蒲は、幼い頃から近所の子達の面倒を見ていたからか、年下の子にはあまり人見知りが発動したりしなかったり。 「兵助、そんなに泣かないで…。」 「うっ…ひっく…、勘ちゃ…。」 目の前で泣き出した一年生が気になって仕方なかった。 「俺のをあげる、って言いたいところだけど、」 B定食には冷奴がついてないから。 その言葉に、私は自分の定食の、まだ一切手をつけてない真っ白なそれに視線を向けるのだった。 先ずは、こうなった経緯について話そうと思う。 「はい、菖蒲ちゃん。A定食だよ。」 『ありがとう、おばちゃん。』 お盆を受け取った私は食堂の隅の席についた。 そして私は欠伸を噛みころして、箸と茶碗を持ったのだった。 それから程なくして、一年生が二人、私の隣にやって来た。 楽しげな彼らの様子に近所の小さな幼馴染達を思い出しながら、私にも後輩が出来たんだな、と実感。まあ、まだ誰とも話したこともないけれど。 「あっ…。」 そんな時、隣から聞こえた声が気になって、思わずチラリと覗き見た私。 どうやら一人の子が何かの拍子に、今日のメニューの冷奴を床に落としたらしい。 本来なら、「やっちゃったよ、あちゃー。」とでも言って終いのような出来事だが、その子はみるみる内に目に涙を溜めて、とうとう泣きだしてしまったのだ。 焦ったように彼の友達が必死に慰めにかかるが、彼はポロポロと涙を零すばかり。 何が彼にとってそんなにショックだったのか私にはよく分からなかったが、私はいてもたってもいられず、 『…よかったら私のあげる。』 そう口に出していた。 「え…。」 当惑したよいな反応を見せる彼。 『あ、別に、いらなかったら、いいの。』 余計なお世話だったのかと、私はしどろもどろになりながら言う。 「…です。」 『?』 「先輩が構わないのなら、」 頂きたい、です。 …キュン。 モジモジと照れたように答えるこの一年生に、私は不覚にもトキメいてしまった。 「よかったね、兵助。」 「うん!」 その様子が本当に嬉しそうに見えたから、私も嬉しくなった。 『兵助君に勘ちゃんでいい?』 「「はい!」」 「僕達も菖蒲先輩、って呼んでいいですか?」 『うん。』 先輩、先輩、と無邪気な笑顔でそう呼ばれると、何だかとてもくすぐったい。 可愛いなぁ、なんて思いながら兵助君の髪の毛をもふもふ。 勘ちゃんが「俺も俺も!」と私に訴えてくる。 ( 後輩が出来ました ) 私の頬は終止ゆるみっぱなし。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 菖蒲さんが尾浜と久々知とキャッキャしてるのを見て、6年生が歯をギリギリさせてるといい← |