「…ほう、それは災難だったな。」

「小平太。お前もちっとは反省しろ。」


仙蔵の慰めの言葉に、文次郎の小平太を戒める言葉。
文次郎にはこいつにもっと言ってやってほしい。




「…僕恥ずかしいな。気絶した上に女の子に保健室まで背負って貰ったなんて。」

顔を赤らめた伊作がそんなことを言うけれど、

『他の奴等ならともかく、伊作は有りだと思う。』

私の言葉にみんなが同意するように頷けば、「そんなぁ…。」と情けない声を上げる伊作だった。



「…伊作は今年も保健委員会か。」

その仙蔵の呟きに、誰一人として声を上げる者はいなかった。




「菖蒲は今年も体育委員会だな!」

『え…。』


私が委員会に所属していたのは、ただの人手不足の補充のためだったのだから、


『私、今年はどこの委員会にも所属しなくていいんだと…。』


その瞬間の小平太の瞳は、捨てられた子犬のそれのようだった。
そんな顔をされても、一体私にどうしろと言うのか。



「仕方ねぇだろ。本来ならくのたまは委員会活動をしなくていいんだ。」

と、留三郎が私の心を代弁してくれて助かった。


「しなくていいと言うのら、逆を言えば本人の希望によっては活動してもいいんだろう?」

ならば作法委員会に来るといい。


そんな仙蔵の言葉に皆が立ち上がる。


「こいつの力は会計委員会に貢献させるべきだ!」

「菖蒲に何日も徹夜させる気か?!是非とも用具委員会で!」

「…図書委員会。」

「菖蒲ちゃんに治療して貰ったら皆喜ぶよ!保健委員会はどうかな?」

「「「…。」」」




まあ、気が向いたらね。

そう言いながら、休み前ぶりの皆の様子に笑うのだった。



『第一、シナ先生に聞いてみないと。』


それもそうか、とみんな納得したらしい。
いそいそと座り直す目の前の忍たま達の姿が何だか可笑しかった。



『私、そろそろくのたま長屋に戻るよ。』



新学年もよろしくね。

そう言い残して、私は部屋を出た。











「菖蒲ちゃん。春休みどうだった?」

『うん、いつもと変わりなかったよ。家の手伝いしたりとか。』

「私も私も。」


廊下で出くわしたくのたまの友達と、私は会話を交わしながら歩いた。


去年の今頃の事を思い出すと、懐かしくなる。

私は皆と上手く話すことが出来ずに毎日が孤独だった。
周りの皆がどんどん仲良くなっていくことに焦燥感を覚えていた。

今ではこうやって話だってできるし、一緒に町に行ったりだってする。


まだまだ緊張して話せないこともあるけれど、これから少しずつでも親睦を深められたらなんて思ってみたり。




( あれから一年 )

今年度も頑張ります。