三周年 | ナノ

スケット団と呼ばれる三人組がいる、という話を友人から聞いて、「何それテニスのあれ?」「それはラケット」「ああ、わかったパンのこと?」「それはバケット」という不毛なやりとりをしばらく続けた後の、一言。

「なんか頼めばなんでもやってくれるんだって」

……何でも?
そう問い返す名前の瞳はきらりと光った。



――一週間後――

「……なあ、スイッチ」
「なんだヒメコ」
「あんな、アタシな、ぶっちゃけると状況把握しとらんねん。そもそも誰やねん、あの子開盟の制服ちゃうやん」
「キャプテンの中学時代の友人だそうだ、何でもオレたちの噂をかぎつけて是非にとのことらしい」
「せやから何を是非にやねん、何やねんこの状況、ボッスンまたあの何とも言えへん顔なっとるやん」
「要するに先週からあの二人は付き合ってるんだ」
「……はあ!?な、な、な、何やねんそれ、え、は!?聞いてへんでアタシはァァ、ふっふっふざけ……い、いや、違うで?ショックとかそういうんと違う、ただアタシはボッスンの保護者としてやな……そもそも何で一言も教えてくれへんの、アタシ友達ちゃうんか!」
「何を動揺しているんだ?そういう設定だと言っているだけだ」
「は?せ、設定?」
「簡単に説明すると、彼女には最近別れた男がいるらしいんだが、好きな人がいるからと言って彼女の方からフッたらしい。だが男のほうがどうも納得しない、それどころか本当に好きな男がいるのかと彼女の周りを探り始めたらしく、ストーカー行為にも発展する勢いらしい。ついに本人に問い詰めたところ、その好きな男とやらに一度会わせてくれそうしたらもう付き纏ったりしないとのことらしく」
「……お、おお……簡単どころか十分や……なんとなく分かったで、つまり好きな男云々は嘘やったからボッスンその新しい彼氏のふりしてくれと」
「そういうことだな」
「不憫や……なんかあいつそんなんばっかやな」
「とにかくその元彼というのがもしもやばそうな男だったら、ヒメコ」
「……何やねん、アタシもそんなんばっかやな。まあええわ、万が一その男がボッスンに殴りかかろうもんならぶっ殺せーゆう話やろ、任せとき」
「そしてオレは」
「お?」
「横から口出しする」
「おまえもそんなんばっかやな」

――10分経過――

「……何や楽しそうやな、何喋ってんねやろ。そもそも何で隣座ってんねん、密着しすぎやろ」
「正面には彼女の元彼が座る予定だからだろう、くっついてるのは単に席が狭いせいだ」
「わかっとるわそんなん!いちいち説明せんといてくれなんか恥ずかしい!あ、やんや言うとる間ーにきたで、あいつちゃうん?……うわ!絶対そうや、名前さん手ーふっとる!やっばいでえらいイケメンやん、ボッスンますます不憫やわ」
「すごい形相でボッスンのことを睨んでいるな、何でこんなちんちくりんを、とか何とか考えているのが手に取るようにわかる」
「やばいでこれ、あの元彼が納得する予感が微塵もせえへん、こんなん十人が見て十人とも元彼のがええ男や判断するわ」
「ボッスンはますます微妙な顔になってしまっているな」
「だ、だめやアタシなんか見てられへん……もう飛び込みたい今すぐボッスン抱きしめてやりたい……こっからでも汗すごいのわかるやん、何やねんあれナイアガラかて」
「こらえろヒメコ、ここで飛び出たら台無しだ、まだボッスンが勝てる見込みも十分あるとオレはみた」
「どこがやねん、あんた目ー大丈夫か?見てみ、隣の席の女の子まで振り返るほどのイケメンや、向井さんばりのオーラやで顔ちっさいわー、それに比べて正面の挙動不審男何やねん帽子からしてふざけとるわ」
「でもよく見てみろ、あの男およそ15秒に一度は自分の前髪を触っている。そのうえ20秒に一度は自分のピアスをいじっているぞ。制服の下に着ているカーディガンにいたっては袖が長すぎだ」
「たしかに何やいけすかんな、長い袖で手ーかくして母性に訴えかける魂胆が見え見えや。……うわ!店員の呼び止め方きしょ!いま二本指立ててたよな、見間違いやあらへんよな!?」
「どうやらこの男自分のことが好きすぎる、そこにつけこめばボッスン、勝てるぞ」
「そうやな、こんないけすかん男よりボッスンのがよっぽどええやつやで……ん?主旨わからんくなってきた、これどうなれば解決?」
「元彼を納得させれば解決」
「……あかん、やっぱ無理や、こら苦戦するで」

――15分経過――

「いやー事態は依然膠着したままですなスイッチさん」
「そうですねヒメコさん」
「元彼やばいな、これでもかいうほど踏ん反りかえっとる、向井さんやのーて蛇姫さんに見えてきたわ」
「ボッスンのこと見下しすぎて見上げそうな勢いだな」
「とにかくなんか会話せえやこいつら何なん何回ドリンクバー行き来すれば気ーすむん、ボッスンにいたってはさっきからずっと氷ぼりぼりやっとるで腹壊しても知らんからな」
「お、元彼がなにか喋るぞ」
「おお何て!?マイクとか盗聴器とかつけてんねやろ!?」
「いやーありえないっしょ」
「何やつけてへんのかい、じゃあ会話わからへんな……」
「今のは元彼の台詞だ」
「かんじわるっ!元彼かんじわるっ!ありえへんてボッスンのことか!ボッスンの何がありえへんねんコラァ!」
「何やらだらだらと喋っているが要点をつくとやはり納得できないとのことらしいな。とくにボッスンの襟足が気に食わないらしい、はねすぎだと言っている」
「何やねん襟足て、どうでもええやろ。それ言ったらアタシはあの元彼の前髪が気に入らん、絶対縮毛かけとるやろきしょいわ」
「あと氷をぼりぼり食べているのが気に入らなかったらしい、初対面の男を前にして失礼だと」
「おお……それでボッスン異様にむせとるんか、せやからやめえ言うたやないか」
「まずいぞ、ボッスンのやつ怒涛のように罵声を浴びせられて涙目だ、『はねてるのは襟足だけじゃなくて全体です』としどろもどろに」
「ボッスンわけわからんくならんといてー!ええやんかそういうヘアースタイルや!元彼の前髪せめえ、きしょい言うたれ、負けるなボッスン!」
「…………(//ω//)」
「お、おお?おい何を一人で頬染めてんねん!アタシにも教えろや、いま名前さん何か言うたやろ!なんや元彼えらいダメージうけてんで!」
「あなたのそういう器の小さくて口うるさいところに嫌気がさしたの、佑助はただ黙って側にいてくれる、ぜんぶ受け止めてくれる……私、佑助のそういう優しさに惹かれたの。私もう佑助と、」
「ちょ、ちょォ待て!これほんまに設定やんな?演技派やな名前さん、なんやのうっかり胸きゅんするわ……あかん、ボッスン顔真っ赤やで、これ嘘てばれへんよな?」
「私もう佑助と、初めても済ませちゃったの」
「あかーーーーーん!!!ボッスンショートしとる!白目剥いとるやんけ、名前さんさすがにやりすぎや!」
「だが見ろ、元彼のほうも白目を剥いているぞ」
「ほんまや、ええで男前も台無しやな!でもボッスンが意識保ってられるかが怪しいで、おっ名前さんまだ喋っとる、何言うとるん?」
「ボッスンとの初夜について事細かに説明しているが放送禁止用語だらけでオレの口からはとても」
「あかーーーーーん!!!ボッスン泡ふき始めたわ!こらあかんて、名前さん何を血迷ってんねん!」
「だが彼女がボッスンがいかにテクニシャンかについて力説していることによって元彼は絶大なダメージを受けているぞ」
「そらザマーミロやけどもっと他にあったやろ!あいつのどこがテクニシャンで夜の帝王やねん、無理あるやろ!」
「夜の帝王とまでは言っていない」
「ええねんそんなん!……あ、あれ?元彼帰る?帰んの?まじか?この世の終わりみたいな顔しとる」
「元彼DTだったらしいよ\(^O^)/」
「楽勝やな元彼!あんないけいけな顔してどんだけ繊細なんや……え?うそ?もうこれ解決?」
「ボッスンは結局氷を食べてただけだな」
「役立たずにも程あるやろ、ほんまに来た意味あったんかあいつ」
「オレたちもな」
「……まあええやん、一件落着やな!いやーこれでストーカー被害も落ち着くやろ!よかったなあ!」
「そんなことよりボッスンが」
「ああっあかん!まだ白目むいたまんまや!あいつもどんだけ繊細やねん!ボッスゥーン!しっかりしいやー!」

――10分後――

「今日はほんとにありがとう」
「いやほんまなんもしてへんけどな、こいつもあたしらも」
「あいつほんとプライド高いから佑助くんみたいなイモっぽい男の子が自分よりも経験値高いとか言われて相当なショックだったとおもう!ねらいどおり」
「腹黒っ!なんやねんイモっぽいて!しかもねらいどおりて!おそろしいなアンタ!」
「ほんと助かった!これで再起不能にさせられたと思う、ほんとにありがとう、お礼に私おごるからみんな何でも注文して」
「再起不能て!ほんまおそろし……え?何でも?ほんま?ええの?いや悪いなあ、そんな……ほんま何もしてへんのに」
「じゃあオレチーズインハンバーグ!」
「オレはビーフシチューのライスセット」
「おいテクニシャン切り替え早いな」
「げほっ!テッテクニシャッ…………ぼりぼりぼりぼり」
「ああもう冗談やてアタシが悪かった!そんな氷食うてたら腹壊すで、ハンバーグ食べんねやろ?」
「笛吹くん、このふたり親子みたいね」
「ヒメコのボッスンへの過保護っぷりは目に見張るものがあるからな」
「じゃあヒメコちゃんは私のお義母さんになるのかなあ!あっはっはこんな姑やだなあ!あ、すみませーん」
「しばくであんた、アタシかてこんな腹黒い嫁いやや」
「お待たせいたしました」
「あ!すみません、えーっとチーズインハンバーグとー……」


ファミレスにて
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スケダン(はちさん)
スケダン好きすぎるんですがこうしてリクエストでももらわない限り書く機会はなかったと思います。オチもヤマもなくてすみません、でもたのしかった…!スケット団の三人が好きすぎるので恋愛させるよりもいつもみたいに活動させてみました、ヒメコほんと大好き
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