※夏野ががちなほも




星空が綺麗に見えはじめる頃、徹の部屋はいつもと同じようにテレビにはテレビゲームがちかちかと眩しく光り、音も、でかかった。
部屋には夏野も居て、夏野もまた独特の雰囲気を持っており彼が居るだけで、その場所の空気は、異様に見える。存在感が大きく、不思議にカリスマ的なものを感じる。

「徹!音大きいぞー。」

徹は父に音がでかいと注意されても気づかない。気づいた夏野は、教えてやろうかと思ったが、ちら、と見たが彼の邪魔をするのは嫌で、雑誌を再び読みはじめた。

徹ちゃんがいつも買っている週刊誌で、読んでいるはずなのだが、全く集中できず、頭に入って来ない。くそ。いらいらする。
視線はちらちらと徹に向けられる。畜生、あんたが気になる。
つやつやとした栗色の柔らかな髪に触れて、次は自分の腕と同じくらい焼けていて、ゲームばかりして鍛えてなんかいないのに何故か逞しい腕を引っ張りたい。唾をごくりと飲み、じぃと背中を見つめていたが恥ずかしくなり俯く。
雑誌なんて読めたもんじゃない。

「なつのぉー、負けそうだ。」
「…………………。」
「何故返事をしない?!」
「名前で呼んだから。」

徹ちゃんのあああ…、悲しげな声を聞きながら今度はポルノ雑誌を手に取る。
生まれて初めて見る雑誌に興味津々。だったが、後悔した。
……――これは、なんていうか……つまらない。というか…お、おんな…。
不快に襲われながらパラパラと雑誌をめくっていく。夏野はだらだらと冷や汗を流し、閉じて表紙を見つめた。
徹ちゃんはこのつまらない雑誌を何に使っているんだ?まさか就寝の時に?ひとりでしている姿はもえるが、こんなのありえない。俺はこのおんなたちが全部徹ちゃんだったらいい、などと考えた。

悲しい事に彼はゲームばっかりしている。
初めて家にあがった時は気を使ってゲームには絶対に手をつけなかった。それから二、三回ぐらい泊まったが、徹ちゃんに「気なんて使わなくていい。俺はあんたの週刊誌読むから気にしないでゲームしていい。っていうか気を使われると気味が悪い。」と言ったら抱き着かれてしまった。息が詰まるくらいのそれに対し再び「気味が悪い」と言った。確か、おまえが気を使ってくれるなんて…!と失礼な事を言っていたような。昔の事だ。
まぁ、気を使わなくていい。だけど、これはあまりにも淋しい。ちっとも構って貰えないのだ。ううむ、と唸る。構ってくれないが、自分の好きな事に夢中になっている彼は好きだ。困った。
暇だった事も手伝って、口を開く。

「徹ちゃんポルノ雑誌に出ろよ。」
「何言ってんだ。んんー。俺が出たっておもしろくないだろう。おんなのこと一緒に過激な雑誌を作れってこと?」
「いや、全部あんたのポルノでいい。それがあったらあんたが一日中ゲームしてても退屈しないからな。」
「む。なんだおまえ退屈してるのか。」
「そうだ。」
「ふふん。いいぞ。来い。俺を誘惑してみろ。」

夏野は思わぬお誘いに驚く。ゲームしている時にこんな事を言うのは本当に珍しいのだ。たまには言ってみるもんだ、と思いながらベットからおり、そろりそろりとドアまで行き静かにドアを開けてポルノ雑誌を階段に投げ捨てて、悪事なんてやらなかったみたいに徹の背中に抱き着いた。

シャツに鼻を押し付け、すう、と匂いをかいだ。徹ちゃんの匂い。好き。たまらなく再びぎゅうと抱き着いた。
シャツをめくり背中に愛おしむよう唇をつけた。唇の間からちろっと下を出して舐めるとぶるっと震える。しょっぱいな。少しばかり汗をかいているようだ。

「なかなかやるな。」

だけどまだ足りないみたいに、徹ちゃんはゲームをし続けている。コントローラーを操作する手は止まらなくて。なんだ?こんなことしたらこのひとは絶対、獣のように貪るように襲ってくるはず。
むむむ、と首を傾げる夏野に徹は笑いながらくるりとこちらを向いた。指で『まわれ』、と合図するので今度は夏野が背を向けた。徹は咳ばらいをして、夏野の両腕を掴むと体重をかけて、俯せに倒しシャツを捲った。夏野は目をぱちくりさせていた。
この徹というおとこは、実は結構おれなんかよりも我慢が出来て、恥ずかしいような場所では絶対しない。なのに、おれを家なんかで襲う時は本当に獣だ。こっちが愛撫する余裕なんて無い。
これからどうなるのかと緊張しながら待った。

「なつの…かわいい。」
「な…うぅ…」

名前で呼ぶなと言おうと口を開いた瞬間、べろりと生暖かく濡れた、蛇のような徹の舌が背中をぞくりとさせた。
すごく気持ちいい。舐められる。徹ちゃんの舌…。息が乱れてきて、うまく呼吸出来ない。このおとこはいまどんな顔をして舐めているんだろう。半眼の、あの、性的な魅力と思わせる顔、なのか。片手が腹を這って、震える。動くと、床に肘があたり、痛い。

「おれもポルノ雑誌一面夏野だったらって考えた事ある。」
「はぁ…はぁ…ああ、徹ちゃんは変態だな…」
「お前もだろ。」

徹ちゃんはいよいよ理性が吹っ飛んできたのか、性急になっていた。家では我慢がきかないらしい。
シャツを脱がせて、腰に乗ってくる。俺は、投げ捨てたポルノ雑誌の事なんかすっかり忘れてしまっていた。
徹ちゃんが前屈みになって、耳の後ろにキスしようとした時、いきなりドアが開いた。

「徹のかい?これ。」

顔を出した武藤(徹の父)に、夏野は焦って脱がされたシャツを引っ張っていた。徹は夏野の上に乗っかったまま、蒼くなっておろおろする。
これはまずい。いくら寛容な武藤でも、驚いてもしかしたらパニックになって怒られるかもしれない。
きっと何をしているかは分からないが。
とにかく武藤が左手にポルノを持っているだけでも、二人には十分おそろしかった。
まずい。何か言い訳をしなければ。今度はふたりでだらだらと冷や汗が出てくる。

「はは、………おんなのこが…出来た時の………押し、倒し、方の練習。」

徹はぎくしゃくとそう言った。


父は、笑った。

「夏野くん。」
「はい。」

蒼い顔のまま、武藤を見上げると優しい表情だった。ベットに雑誌を置き、夏野の目の前にしゃがみ両手で頬をつつむ。親指は、唇に触れている。夏野は徹とよく似た垂れ目を見つめた。そういえば、このひとは普段白衣を着ているんだったっけ。その長身に白衣を着せたらきっとすごくかっこいい。大変な事になるだろう。
そう思った。

ぺろり、指を舐めた。上目で武藤を見ると、笑っていた。夏野は嬉しくなった。そこにあるのは、心ではない。性のみ。今、頭なんかで考えていたらこの大人の男を逃がしてしまう。大人は、ずる賢くて、せくしーだ。
一方徹は、父に負けたくないのか、夏野の耳を甘噛みする。

きっとこの時二人は、自分以外の誰かが加わることを挑戦してみたかっただけで、武藤もまた興味本位だったのかもしれない。
三人はただ、だらしなくちょっとした快楽を求めており、武藤は徹をませるなと怒らなかったし、徹は夏野が浮気者と言わなかったし、夏野は二人を嫌がらなかった。××××パーティー。

「はぁ、はぁ、徹ちゃん、カメラもって、こいよ。」
「いいよ。」

シャッター音が鳴った。

猫みたいにぺろぺろと親指を舐めるとご褒美みたいに頬から手が離れ、人差し指を出され必死にちゅうと吸って舐めた。武藤は指が気持ちよく、すっかりここに居座る。徹は夏野の首筋にキスをする。
また、シャッター音が聞こえた。

「いい写真が撮れたよ。」
「小父さん、もっと、撮って。」




翌日、武藤からフォトアルバムが夏野と徹へと送られた。
夏野は嬉しくなって、さっそく武藤家へと出掛けた。






--------
徹父もまぜたかったのです。カメラはデジカメ現像するときにインスタントだと問題が起きるのです。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -