あいえんきえん | ナノ

単純明快


「亡者貞子の後処理と、不喜所の従業員について…」

閻魔殿内を忙しく歩き回りながら資料への書き込みやらなんやらをする。
これを早く終わらして夕食にしよう。

にしても、あの貞子がワンセグから逃げ出そうとするだなんて…凄い執念だな…。

逃げ出した貞子は、鬼灯様の機転聞いた処置とシロくんの活躍によって捕らえられた。

あの貞子に襲いかかった時のシロくんは獣そのものな…不喜所地獄での貫禄がでてきだしたなぁ…。

不喜所といえば、シロくんの先輩にあたる夜叉一さんとお局様であるクッキーさんが結婚する事になって、クッキーさんが寿退社することになった。

シロくん的には衝撃的過ぎたようだけど…。

どっちにしろ、結婚ってめでたい事だよね。夜叉一さんもクッキーさんも幸せそうで何より。

「ずいぶんご機嫌そうですね、名前さん」

中庭に差し掛かったとき声が聞こえてそちらをみてみると、中庭中にある金魚草へ水やりをしていた。

仕事はちゃんと終わったんですか、とやわらかく聞かれて曖昧に返事をしておいた。
夕食時だし、もう切り上げてもいいよね。

「もうそんな時間ですか…趣味に没頭するとついつい時間が経つのを忘れてしまいがちですね」

夕食の話題をだすと、いそいそと片付けを始めた鬼灯様。
金魚草は鬼灯様が品種改良をなさったもので、今では大きさを競うような大会も有るほど愛好家が増えているらしい。

どことなく、金魚草の世話をしているときの鬼灯様は生き生きとしている気がする。

「なにをぼんやりとしているんですか。置いていきますよ」

「はっはい!!」

「とは言っても、夕食はちゃんと仕事を済ませてから来るように」

ああ…鬼め…仕事の鬼め…。
心で叫んでから急いで残りの仕事に取り組むことにした。








「あー、疲れた…」

仕事を終わらせて食堂へ入ると、唐瓜くんや茄子くん、シロくん達不喜所メンバーをはじめとした獄卒で賑わっていた。
一際目立つのは、テレビの前の特等席にいる鬼灯様と向かいに座っている閻魔様のいる机。

「あ、名前ちゃんお疲れ様」

定番のメニューを持って鬼灯様と閻魔様の机へ向かうと、閻魔様が労いの言葉をかけてくれ、ちょっと疲れが和らいだ。

席に着いてから、テレビをみると現世のオーストラリアが丁度映っていた。

「あ、オーストラリアですか。良いですね…私現世はまだいったこと無いんですよね」

コアラ抱っこしてみたいです、と言うと、閻魔様が鬼灯君と同じこといってるよと笑いだした。

「え、鬼灯様が?!どっちかって言うと、鬼灯様はタスマニアデビルを手懐けるようなイメージが」

「名前さんも大王も、揃いも揃って、私にどんなイメージを持ってるんですか」

勿論手懐けられますけど、と当然のごとく言い味噌汁をすする鬼灯様。

「鬼灯様に手懐けられない動物はいない気がします…」

うんうんと、頷いた閻魔様は何かを考えた後に、ペットは小型にしてよね!!鬼灯君!!と叫んでいた。

「は?私は今のところ金魚しか飼っておりませんが…」

「金魚草って動物なんですか、植物なんですか…」

はて、と鬼灯様は首をかしげて考えていた。
金魚草は、簡単に言うと植物の先端に金魚が乗っかっているように生えている様なものだ。
最終的に、動植物ですかね、と鬼灯様は結論付けた。

「あれって君が品種改良をしたんでしょ?長い付き合いだけど未だに君のミステリーは尽きないよ」

女の子の好みとか想像できないし、と閻魔様が聞くと、テレビに映ってるミステリーハンターのお姉さんを指差す。

へぇーっと閻魔様とテレビをみていると、鬼灯様は虫や動物に臆さない人が良いと付け加えていた。

「仕事を頑張ってる人も良いと思いますよ。あと明るい人も好きです」

「鬼灯様にも好きなタイプとかあるんですね。何か安心しましたよ」

好きな人とかもいないような気がしますし、と思わず言う。
何となくそういうのは興味ないってタイプに見えるし。

「名前さんの中での私のイメージは失礼なものが多いですよ。私は至って単純な男なんですから」

「単純とは……?」

「……好きな人と一緒にいると楽しいとか、一般的な奴ですってことです」

「あ、なるほど。」

妙に納得してしまった。そういわれると普通だなぁと思った。
好きな人といるときは楽しいっていってもやっぱり相変わらずの無表情なのかな…。
……ちょっと想像つかない。

「……それでもたまには旅行くらい行きたいです」

「行きたいねー」

でも、手続きとかめんどくさいからまた今度ってなっちゃうよね、という閻魔様に同意する。

手続きめんどくさいからやっぱりいいかってなることあるし。

「でも、仕事の事とか忘れて癒されたいです」

まぁ、無理だろうけどなと思いながらぼやいていたら鬼灯様がテレビをみてあ、っと声をあげた。

なんだ、と思ってテレビをみると。
オーストラリアの旅の当選者に鬼灯様の名前が。

「ほ、鬼灯様当たってる?!ってか応募してたの?!」

「閻魔大王!私有給頂きますよ!!止めても行きますからね!!あと、最近名前さんが仕事が立て込んでいたのでリフレッシュさせに連れていきます!!」

「え?え?」

私も行けるの?仕事休み?

「むしろワシも連れていけよ!!」

「嫌です!!」

思わぬ所で旅行の予定が入りました。
お言葉に甘えて、リフレッシュしにいこう。






20140315

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