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不可避の巡り合わせ

もしかしたら、これは偶然ではなく必然的な出会いだったのかもしれない。







「八大地獄からの人材要請?」

ごうごうと音をたてながら吹雪いている中に、疑問気に返答する声がまざった。

「そうだ。どうやら八寒地獄の知識の有るものがいた方が何かと効率が良くなるだろうとのことでな」

八寒地獄の各署の責任者の中で少し偉そうにした人物がボソボソと口を開いた。

ここは八寒地獄と呼ばれる場所であり、寒さだけでできている地獄である。
八大地獄と対等な地獄であるはずなのだが、

「八寒地獄は八大地獄のオマケのような気がしてならないというのは知っているだろう。これは八寒地獄独立に繋がる良い機会になるやもしれん」

「そうゆうもんですかね……」

そんなに独立独立とこだわる必要が有るのだろうか、と半場呆れ気味に聞いている獄卒名前は、少し眉を下げた。

父は八寒の雪鬼、母は八大の鬼のハーフである名前は八寒の獄卒となるまでは八大の一般住居に住んでおり、刑場こそ余り行く機会がなかったが八大の地形や知識は他の八寒の者よりは多いだろう。

そこで白羽の矢がたったのがおそらく自分だった、とのことだった。

本人の意思は関係ないのか、と壮大なつっこみをいれたいところだがいれたところでなにも変わらないことを名前は悟っていた。

心の中でため息をつき、了承の意を伝えぼんやりと空を眺めた。

しばらくこの雪ともお別れか。




ザクザクと足跡をつけながら道を進むが、この吹雪のなか数秒後には跡形もなくに真っ白に染め上がっていく。

八寒では当たり前のことを尻目に、言われたことをぽつぽつと思い出していた。

どうやら八寒と八大の間の門の所まで迎えにきてくださる閻魔大王第一補佐官である鬼神、鬼灯様が今回の事の発端らしい。

この方は広く冷徹で厳しいなどという噂をよく聞く。
鬼灯様が目を光らせている間は独立できそうにもないとか。

八寒の責任者の方々はああ仰っていたけれど、独立に繋がるとは思えない。

むしろその様な噂のたつ鬼灯様のことだ、八寒の思惑など当に見抜いていらっしゃる事だろう。

なら、何故八寒へ人材要請など……。

考えてもしかないか、私は私の役目を果たすだけだ。

これより先八大地獄とかかれた巨大な扉を押し開くと、悶々と生暖かい熱風が迎えしてくれた。

この感覚は久々だなぁと、ちょっと懐かしさに浸っているところ、黒を基調とした着物に如何にも重そうな金棒を傍らに持ち、気品ある佇まいの鬼が深々とお辞儀をした。

その様子をみて慌てて同じようにお辞儀をした。
鬼神たる所以を肌で感じ取って、緊張で唇を噛み締める。

この方が…、

「初めまして、閻魔大王第一補佐官の鬼灯と申します。この度は突然の人材要請にお応え頂きありがとうございます」

顔をあげると視線が交わり、鬼灯様の切れ長の瞳が私をとらえた。

正面から少し控えめに鬼灯様をみると、整った顔つきに逞しい腕、凛とした目。

思わず見惚れてしまっていたことに気づいて、恥ずかしさの余り先程よりも深々と、少し違和感のあるほどお辞儀をしてしまった。

「は、じめまして!名前と申します。よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

少し目を細めて鬼灯は仰るけれど、緊張するなと言う方が無理だと思う。

鬼灯様は立派な官吏、私は平の獄卒。
こんな風に隣を歩くことがくるなど、誰が考えた事だろう。

「では、詳しい話は歩きながらにしましょう」

荷物お持ちします、とそれなりの量の私の荷物をひょいっと持ち鬼灯様は颯爽と歩きだし、私は慌てて後を追う。

金棒を持ちながらも、あの荷物を持つって…。
並みの人には無理なことをこんなに簡単にこなしてしまう鬼灯様に、思わず感嘆してしまった。





20140309

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