きらびやかなシャンデリアが吊るされている天井ほど俺に似合わないものは、ないと思う。
キラキラキラキラ。
シャンデリアのダイヤが光に反射して眩しい。
ぎゅ、と目を閉じるとメフィストは「怖いのですか?」と問うてきた。
「怖くなんかねーよ、眩しいだけだ」
「おやおや、」
メフィストは微笑みを浮かべつつも、俺の身体に舌を這わす。
しっとりと肌に吸い付いてきそうな感覚だ。
俺は電気ショックを受けたかのように硬直し、身体を痙攣させる。目をゆっくりと開くとメフィストは満足気な、しかし残忍な悦びの笑みを浮かべた。
「奥村くん、」
「な、んだよ…」
「私を見てくれないのですか?」
頬にメフィストは右の手を遣り俺の顔を正面に向けようとする。
「恥ずかしいんですか?」
この男は面と向かって、言いたい事ばかり言ってくる。
思春期の俺が幾つかも不明の男と交わる事に恥ずかしさの欠片も無いなんてことはない。
目を伏して小さく頷いてみせるとメフィストはクツクツと低い声を漏らし、少しだけ乱暴な口調になった。
「どうして恥ずかしいのか、私の目を見ながら言いなさい」
メフィストの薬指は俺の唇から瞼へと愛撫を移動させる。
「長い睫毛、可愛いですね」
右手で俺の髪の毛を掴み顔が動かぬよう固定された。
瞼に吐息を感じた刹那、メフィストが舌の先で睫毛を軽く舐めたのだ。
病的な程まで白い肌から、ちらりと覗かせる赤い舌を伝って俺の下っ腹にこぼれ落ちる唾液。
ひやりと冷たい。
甘い、しかし野蛮な香りもしそうだった。
メフィストが唾液を指に絡める。それを俺の胸に塗るかのように付けた。
ぶるぶると震える身体に、情けなく口からは甘い吐息が溢れた。
ざらざらした舌が胸に吸い付く。あ、あぁっ。
思考回路がショートする。
羞恥心なんて、どうでもいいじゃないか。
俺はメフィストの手を振りほどき背中に両手を廻し強引に抱き締めるも、メフィストは抗わず俺の上に倒れ込んだ。
きつく抱擁されつつもメフィストは器用に俺のズボンを脱がしていく。
苦悶の表情を浮かべながらも快楽に支配された俺の姿は、きっと、とても滑稽だろう。
メフィストは熱を持った俺のものから出た、白くねっとりとした液を指で掬い、顔の前に差し出す。
俺はその指にむしゃぶりついた。決して美味しいとは言えないのに無我夢中で長い指に絡まった白濁を舐めた。
メフィストが、ごくりと唾を飲む音がする。
スプレイグリーンの瞳が、うっすらと細められた。
「いけない弟だ、」
メフィストが、ゆっくりと唇を重ねる。
歯と歯が当たろうが頓着せぬ、粗雑な口付けに熱中した。
飢えた息遣いで俺はメフィストにすがりつくように「もっと、頂戴」と哀願していた。
溺れゆく白
title 星葬