前方の校門近くに峰岸先輩の後ろ姿が見えて、急いで自転車のペダルを漕いぐ。



「峰岸せんぱいっ」


「ああ、昨日の……」




俺を見ると少し困った顔をした峰岸先輩。




「桐生です」


「そうそう、桐生くん」




俺が自分の名前を言うと、峰岸先輩の顔がパアッと明るくなった。




うん。顔を覚えてもらえただけでも良しとしよう。


昨日までは存在すらも知られてなかったんだから……。




「桐生くん、今日は自転車なんだね」


「はい。普段はチャリ通なんす。朝弱いんで」


「昨日は寝ちゃったもんね」




口元に手をやってクスクス笑う。




「あー……、ありがとうございます!! あの時俺なにもしてませんよね?」




本当は起きてたけど。

わざと肩の上に頭乗せたけど。




「え、う、ううん……!!」




峰岸先輩は、急に真っ赤になって、焦りだした。多分、思い出してんだろう。近かったし。



クールなイメージがあった峰岸先輩が笑ったり照れたりしているのを見て、ますます可愛いと思った。




俺は自転車を押して先輩と並んで歩きながら話していると、もう駅に着くいてしまった。


「じゃあね、桐生くん」


「峰岸さんっ」


「……?」




やばい。


思わず引き止めちゃったけど、何も考えてなかった。




「え……と、……肉まん、食べたくありません?」




近くのコンビニで肉まんを二つ買って駐車場で待っている峰岸先輩の所へ持っていった。




「どうぞ」


「ありがとう」




肉まんを食べ終わると、




「じゃあね、ごちそうさまです」




ぺこり、お辞儀をして駅の中に入っていく峰岸先輩。


遠くなっていく峰岸先輩の背中を見つめながら、寂しいような残念なような気持ちが溢れてきて。




「峰岸せんぱいっ」


「あれ? 桐生くん、自転車は?」


「いいんです、送ります!!」




峰岸先輩が、困ったような表情をしたから迷惑だったかと心配したけど、




「ありがとう、暗くなってきたしちょっと怖かったの」




その言葉を聞いて、一安心。


さりげなく手を握って、二人で駅の改札を通った。


自転車を忘れた火曜日


(えっ、て、手が……)
(先輩、顔赤いですよ? どうしました?)
(……っ、)








HP : 赤いお部屋 / れッと

0.3ミリ様 提出お題







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