君を想って、笑ったり泣いたり起こったり喜んだり。きっと、これが“恋をしている”ってこと。






「だから、あたし言ったんじゃん!!」

「そんなの知らねぇよ!!」

「はぁ!?」

「あーもう、わかったから!! 今必死で探してんだよ!!」



苛立つ彼は自分の髪をわしゃわしゃと掻き乱すと、再びゴミ箱の中へと手を突っ込む。

その様子を、腕組みしながらソファに座って見ているあたし。


眉間のシワや、時々聞こえる舌打ち。大きな溜め息。どれもがあたしの神経を逆撫でするような要素にしかならなくて。



「そんなに嫌ならもう探さなくて良いんじゃない!!」



そう叫ぶや、家を飛び出した。


真冬の夜中の寒空の下。なにも考えずに出て来た結果、寝巻きにスリッパという格好になってしまった。

近所の公園のキーコキーコと音がするブランコに座って、頭を冷やす。


寒いし恥ずかしいし寂しいし怖いし。今すぐ温かいあの家へと帰りたいのだけれど。

あんなに怒鳴って勢い良く飛び出て来た身としては、たいへん帰りづらい。



「……っ、」



泣きそうだ、っていうか、もう涙が出てきてしまった。


なんでだろう。

友達の時から気が合っていたあたし達だから絶対うまくいくと思っていたのに。付き合ってみれば最初は楽しかったものの、今は喧嘩ばかり。


いわゆる倦怠期ってやつなのか、それとも好きじゃなくなってしまったのか。



「ふぇっ……っ、……うっ」

「ちょ、恥ずかしいから声出して泣くなよ」

「……うっ、……なんで、」



俯いていた顔をあげると、そこには彼の姿。への字にに曲がったままの口で、あほ、と一言。



「大好きな彼女がこんな夜中に出てったら、追いかけない奴は男じゃないんだよ」

「うぅー、……ばか!」



わかったわかった、と優しい声。冷えたあたしの体は彼の腕にそっと包み込まれた。

そしたら、また涙が出てきてしまって。だけど、この涙はさっきのとは違って暖かい。


なんだか今なら、素直に言葉を伝えることが出来そう。



「あたし達が付き合ってるのってさ……、必然じゃあないのかな?」

「はぁっ!? お前、なにそれ……、」

「ちょっと、笑わないでよ」



お腹を抱えて、笑い出した彼。

柄じゃないのはわかってるけど、そんなに笑わなくても良いんじゃない。



「ごめんごめん。……ほら、これ」



今回の喧嘩の原因である彼がなくしたペアリング。それが、彼の手のひらの上に。



「あったの!?」

「指輪なくしたのも、お前が飛び出したのも、見つかったのも。全部必然ってことで」

「それ、」

「俺らが仲直りすんのも、必然、だろ?」



あたしの右手を彼の右手が強く握った。つまりは、仲直りの握手。


今回は、うまい具合に言いくるめられた気がするけれど。仕方がない。



「“大好きな彼女”だもんね?」

「あ、……あれは言い間違いだっつーの」

「照れんなっつーのー」

「はぁ!? 調子のってんじゃねぇよ」

「そっちこそ!!」



ラブ・クアリル

こんな恋もありでしょう?






HP : amare / 藍澤れつ

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