目を開けてから少し経つとようやく意識が覚醒された。と、さっきまでは気付かなかったが、なにかの匂いが鼻を掠める。
スンスンと鼻を鳴らせば、ふわりと香る甘いフローラル。
「あ、起きた」
涼子さんのソプラノボイスが耳に届いた。それは、心地よく僕の心に刻まれる。
見れば、僕の寝ているソファにもたれ掛かって座っている涼子さんの頭が目の前に。
いつもは一つに纏めている髪を下ろしているからか、一段と大人っぽく見えた。
「お腹すいた? なにか作ろうか?」
キッチンに向かう為、立ち上がろうとする涼子さんの腕を掴んでそれを阻止する。
不思議そうに僕の顔を覗き込んだ後、クスリと笑った。涼子さんの笑い声はグランドピアノの一音みたいに綺麗だ。
「甘えちゃって、」
目の前には柔和な笑みを浮かべる涼子さん。
「……、なんか、いい匂いがする」
「香水、貰ったから」
首を近付けて、どう、と問われた。
さっきよりも強く香る。大人な涼子さんには、とても似合う甘い香り。だけどそれが何故だか、無性に嫌だ。
「……っ、」
ペロリ。無意識に僕の舌が涼子さんの首筋を這っていた。
涼子さんはこそばかったようで、体が小刻みに震えている。
「どうしたの、今日は――」
と、ふと、涼子さんの手が額に触れた。冷たくて、気持ち良い。
「もしかして、熱ある?」
「さあ」
「さあ、って……いつから?」
「さあ……それより」
視界がボーッとするような気もするな。と、頭の片隅で思いながら、涼子さんの腕を掴んだ。
そして、のそりと起き上がるとゆっくり涼子さんの上に覆い被さる。
(あ、また、香った。)
「熱、移して良いですか」
僕を見上げる涼子さんは、少し目を見開いてから微笑んだ。
その優美をめちゃくちゃにしたい、だなんて――
これが、愛というものなのだろうか
HP : amare / 藍澤れつ
God bless you!様 10/11月お題