ずっと好きなんだと、ずっと想われるんだと、ずっとずっと一緒に居るんだと。そう思っていた。
彼から別れを告げられるだなんて。そんなこと微塵も考えてもみなくて。
そんなことよりも、彼にフラれたのに涙も出なかった自分に心が痛んだ。
「先輩元気ないっすねー?」
「そ? 最近、フラれたからかもね」
バイト先のコンビニで、毎度お馴染みのツナマヨおにぎりを持って私のいるレジへやって来る後輩くん。
あたしが居るときはいつも見る。一人でコンビニなんて、どれだけ暇なんだろうか。
「わお、先輩フラれちゃったんですか?」
「何故だろう。君がとても嬉しそうに見えるのは」
「あ、顔に出ちゃってました? 俺今、心の中でガッツポーズしてましたもん」
目の前の後輩くんはヘラヘラと笑って実際にガッツポーズをして見せた。
そんなに私に彼氏がいたことが嫌だったのか。自分に彼女がいないからって、僻んでいたのだろうか。
それにしても、失礼なやつだ。
「そんじゃあ先輩、アドレス教えてくださいよー」
「『そんじゃあ』の意味がわからないんだけど」
「あ、俺のやつレシートに書くんでメールしてくださいねー」
「人の話を聞け」
全く、どこまでも自由だな。
はあっとわざと深く溜め息を吐くと、どうしたんですか、などと言われた。
「君の所為だ」
「本当ですかっ!」
パアッと瞳を輝かせる後輩くん。周りにお花畑でも見えそうなくらい、嬉しそう。
誉めたつもりはないんだけど……。そう呟けば、後輩くんの耳に届いたようで。
違いますよ。とへらへら笑う。
「先輩が俺のこと考えてくれたってことが嬉しいんすよー」
「なんで、」
「そりゃ好きだからでしょ」
さらっと言われたその言葉を、聞き逃してしまいそうだった。けれど、言葉とは裏腹に真剣な雰囲気が伝わってきて。
後輩くんのまるい瞳に見据えられると、なんだか、どうすれば良いのかわからなくなる。
「先輩は、永遠って信じますか?」
「……信じない」
「じゃあ、俺が信じさせてあげます。約束します」
永遠なんて。愛なんて。
ただのその一時だけの感情であって、そんなのこの世に存在しない。
そう、思うはずなのに。
後輩くんの賭けにのってみたい、だなんて。
私はどこか可笑しくなってしまったのかもしれないな、と。ふっと無意識に口許が緩んでいるのに気がついた。
変わらない愛を頂戴
君との永遠を信じてみたいと、柄にもないことを考えてみた。
HP : amare / 藍澤れつ
蝶々くらべ様 提出