きゃー、という女の子達の歓声。
私は、それが聞こえてきた方へと向きを変えて走り出した。
たたたっと駆けていくと、知っている顔。
「あ、梅子ちゃーん」
「都倉くんはー?」
「向こうに言ったよー」
クラスメートにお礼を言うと、再び言われた方向へ走り出した。
都倉くんの方に近づけば近づく程、どんどん女の子達の歓声が大きくなっていく。
二階の階段の横の角を曲がった所に、都倉くんはいた。
予想通り、たくさんの女の子達に囲まれていて。ここからじゃ都倉くんに近づけそうにない。
「ううん、諦めるな梅子!」
自分に渇をいれると、都倉くんを囲っている女の子達の中に突入した。
「は? なにコイツ」
「割り込まないでくれる?」
「あ、都倉くーん」
やっぱり、そう簡単には都倉くんの所に辿り着かせてくれないらしい。
だけどもう一度懲りずに突入。
すると、手前にいる女の子にぶつかってしまった。
「ちょっと、押さないでよ!」
ドン。その表現が一番ぴったりくるくらい突き飛ばされた。
やばい、倒れる。
痛い思いをする覚悟をしてぎゅっと目を瞑った。
「そういうの、止めて。」
だけど、想像していた痛みは来なくて、かわりに低い声が頭の上から降ってきた。
「梅子ちゃん、大丈夫?」
「とととと都倉くん……!?」
倒れたと思った私の体は都倉くんの腕によって受け止められていて。
「ごめん。俺、好きなコ以外からは受け取る気ない。」
都倉くんは、女の子達に向けてすぱっとそう言うと、私の腕を引いて廊下を進んでいく。
好きなコいるんだ。なんて今更ながらにショックを受けながらも。
どきどきどき、と高鳴る胸は止めらなくて。
戸惑いながらも腕を引かれながら都倉くんについて行った。
「梅子ちゃんはくれないの?」
廊下の行き当たりに辿り着くと、都倉くんは振り返った。
「え、でも、好きなコ以外からは受け取らないんじゃ……」
「うん。好きなコ以外からはね」
笑顔の都倉くんはとてもとてもきらきらと輝いていた。
それって期待しても良いって事、ですか。
「え、えと、はい!」
そう言って両手でチョコを差し出す。だけど緊張で俯いてしまって。
すると、ふわりと手が軽くなって。顔をあげると私のチョコを片手に爽やかに笑う都倉くん。
「ありがとう。梅子ちゃん」
年に一度のハッピーデイ
HP : 赤いお部屋 / れッと
蝶々くらべ様 提出