ぶわっと強い風が吹いてピンク色の花びらが宙を舞った。


春の匂いとぽかぽかな陽気に、無意味に嬉しく楽しくなる。


すると、前方にあの人の姿。



「ハールーさーん!」

「ゲ……」



ハルさんは、私の顔を見た途端に顔をひきつらせた。


うわ、傷付くなあ。



「ハルさん、おはようございます!」

「ハルじゃないです。春と書いてシュンです。」



えーでもハルさんって感じがするんですもーん。と言うと知りません。と冷たく言い放ち、すたすたと歩いて行くハルさん。その後ろ姿を慌てて追い掛ける。



「ハルさんハルさん」

「…………。」

「わ、シカト! 私泣いちゃいますよー」

「うるさいです。」



なんだかんだハルさんは私を無視出来ないでいる。そんな優しさにつけこんで、毎日付きまとっている私。


だって、好きなんだもん。



「一緒のクラスになれたら良いですねー」

「僕は嫌です。」



またまたーと笑う。ハルさんは笑わない。だけど、たまに笑う。少しだけど。その、笑顔と呼ぶにはなにか足りないような表情が私は好きだ。


ハルさんは冷たいように見られがちだけど、実は世界一優しい。その、わかりにくいけどとても温かい心が私は好きだ。



「ハルさん」

「なんですか」

「好きです」



ぽろり溢れたその言葉。伝えた回数は数えきれないくらい。


ハルさんはキツく断ったりしない。それが優しさだと思っているのかもしれない。



今日もハルさんは、私のその言葉に口の端をひくっとひきつらせた。



「そんな顔しないで下さいよ」

「…………。」



私は困っているハルさんの目の前で右手を腰にあてて、左手の人差し指をハルさんに突き付けた。



「ハルさんは、いつか私の事を好きなります! ならせてみせます!」




数ヵ月後のあなたは



きっと私にメロメロです。






HP : 赤いお部屋 / れッと

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