笑顔の裏の裏 サスケと一緒に一楽ののれんをくぐったら、いい香りのおかげで一気にお腹が空いてきた。暑いけど、見たら食べたくなるしやっぱりラーメンは好き。一楽のおっちゃんに「なににする?」と聞かれて、味噌ひとつ!って元気に答えた。 「そう言えば珍しいね、一楽だったらナルトとか誘ってあげたら良かったのに。」 「あいつとは結構来るから別に…それに、最近ヒメと全然話してなかっただろ。なんか悩んでるのかと思って心配しても…かわすし」 「あ、あー…なんかごめんね、心配かけて…」 「別に、気にすんな」 そう言われれば去年までは毎日のように絡んでたから、確かに今年になっていきなり…避けてる、みたいになっちゃってたかも。 なんだか悪いことしたなあ。 でも、「それは私があなたのお兄さんのこと大好きになっちゃったからです」なんて素直に言えたもんじゃない。それが言えてたらこんなに苦労はしてないんだ。いや、別に…今サスケとのことで特別苦労してるわけでもないけど。 「ただ、なんかあって悩んでるんだったら、遠慮せず言えよ。」 「…うん」 「ほんとに分かってんのか?お前、ちょいちょい1人で溜め込むよなー」 「うっ」 「バレてねえとか思ってんだか知らねえけど…バレバレだから」 そう言って頭を鷲掴みにされ、更にそのままがしがしと揺さぶられて慌てて抵抗する。はあ、サスケって意外と人を見てるんだなあ。たった2年の付き合い、なんて思ってたけど、案外そうでもなかったみたいだ。でも、そうなるとちょっとめんどくさいなあ。もしかして、もしかしたら言わないだけで…私のイタチ先生に対する気持ちもバレちゃったりしてるんじゃないだろうか。 「…ねえ、サスケ」 「ん?」 「へいお待ち!まずはお嬢ちゃんの味噌ラーメン1丁!」 「はーい!…さ、先に食べてもいい?」 「なんだ、今更んなこと気にすんな、伸びるだろ」 「うん、いただきまーす!」 「はい、次は兄ちゃんの醤油ラーメンな!」 「いただきます」 …なんて、やっぱり聞ける訳もなく。 聞いたところで、自分から先生のことが好きって暴露してるようなもんだし、それが広まってバレるのも、気まずくなるのも嫌だし…ましてや、イタチ先生とつ、つつつ付き合ってるとか、そういう訳でもないんだし!うん。 余計なこと言われるのも嫌だし、やっぱり自分からこの話題を出すのはやめておこう。 「んー、美味しー!」 「お嬢ちゃんほんっと美味そうな顔して食うなあ、ほら、煮玉子おまけ!」 「わあ!ありがとうございまーす!」 「お前…」 「んう?」 「…ふはっ…煮玉子1口で食うやつがあるかよ…!」 「む…」 おまけしてもらったことが嬉しくて、煮玉子を思わず丸ごとぱくりと放り込んでしまい、ハムスターのようになった私を見てサスケが笑う。抗議しようにも口が開けられないため彼を睨みつけるが、それが余計に悪かったようで彼はいよいよ咳き込み始めた。 ちょっともういい加減にうざいと思いながらも、そう言えば、こんなサスケの笑顔を見たのはいつぶりだろうか。なんて考えた。 私のことばっかり心配してくれてるけど、実際、彼は大丈夫なんだろうか。 サスケが私のこと見てくれてるように、私だってこの2年間でサスケのことだいぶ知った、つもりにはなっている。 お父さんと上手くいってない時とか、ナルトと大喧嘩したとき、…そんな時、サスケがその心の内を吐き出してくれたのはいつも2人で歩く帰り道でだった。サスケだって、学校ではクールでカッコいいってキャラで見られてるけど、それは全部我慢してるからそうなんだ、って、私は知ってる。 「…サスケ」 「ははっ、はー、なんだよ、機嫌直せよ…もう笑わねえから」 「サスケもさ、なにかあったら…抱え込まないで、ちゃんと言ってね。」 「……」 「話聞くくらいなら…私にもできるからさ!」 「…ああ」 ありがとな。 小さく小さくつぶやいて、サスケはラーメンのスープを一気に飲んだ。 (20140802) ← // → ← thanx!! :) |