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▼ポッキーゲーム'14

(キャラ崩壊気味・変態注意)



「なあ、なまえ」
「んー?」
「ポッキー食べるか?」
「食べる食べる!ちょうだい!」

時刻は15時、丁度おやつ時。
俺はこっそり用意していたポッキーの箱を開け、1袋取り出して彼女に渡した。何も知らない彼女は嬉しそうに「イタチが洋菓子買ってくるなんて珍しいね」なんて言いながらそれを1本取り出して口に入れる。

「ストップ」

と、そこでポッキーを手にしていた右手を掴んだ。当然ながら、面食らった彼女は目を丸くして驚いている。そりゃそうだ、ポッキーを食べているところを邪魔してくるやつなんて普通いないだろう。ポッキーを口にくわえたまま驚いている彼女の両手を掴んで、俺はにやりと笑った。

「ポッキーゲームしよう」
「…んー?」
「今日はほら、11月11日だから」
「…んー」
「…だめか?」
「んー…んーん」

たぶん、了承は得た。
先程より納得したような表情を浮かべる彼女の口から伸びている茶色いそれを見つめる。これを食べ進めていけば、ゴールは、ほら。ああ、ポッキーゲームというものを考えた人はなんて頭がいいんだろう。少し焦れったいけれど、その先は確実に相手の唇と繋がっていて、少しずつではあるが着実にその唇へと近づくことができるのだ。こんなにドキドキするお菓子の食べ方を、俺は他に知らない。そうだ、これはキスではない。お菓子を食べると言う行為のうちのひとつなんだ。あ、あれ?キスをするという行為のうちのひとつ…?いや、もうなんだっていい。とにかく俺は今ポッキーゲームがしたくてたまらないんだ。
段々なまえから軽蔑の眼差しを向けられているような気もするが、それは気にせず、「ひとくちずつ順番に食べていこう」、そう告げて彼女の両肩に手を置いた。

「いただきます」

ぱき、
口に入れた瞬間、チョコの味が口の中に広がる。うん、ポッキーの味だ。普通に美味しい。

ぱき、
なまえの顔が少し近づいた。なんかひとくちが小さくないか?あまり距離が変わっていないのだが。

ぱき、
そうか、焦らした方が良かったのかもしれない。俺もさっきより短めに食べたぞ。
…あれ?なんで睨まれたのか、理解に苦しむ。

ぱき、
ち、近づいてきた、近づいてきたぞ、鼻先が触れそうで触れない、このくらいの距離。いい、いいぞ、ドキドキしてきた、これがこのゲームの醍醐味だ、ここから俺が一気に追い上げ

「も、もうやめ!」
「…」

なんということだ。目の前まで迫っていた赤い顔が瞬時に遠ざかる。両肩に手を置いたままとは言え、ポッキーから口を離した彼女は随分遠いところへ行ってしまった。(錯覚)

「恥ずかしくて…これ以上は無理…」

そう言いながら両手で顔を覆う彼女はそれはそれでとても可愛らしいのだけど、でも、俺は食べかけのポッキーを咥えたままなんだが、それは。もしかしてもしかしなくてもこれはちょっと情けない状態なのではないだろうか。向かいの彼女は小さな声で「離して」と訴えてくるけれど、俺は離さん。ポッキーゲームを完遂するまで、断じてこの手は離さんぞ。

「ん。」
「…え…」
「ん。」

顔を少し縦に振り、咥えているこれを早く口に入れろと催促する。イヤイヤと首を横に振る彼女だったが、ずっとこのまま向き合っているのもどうかと思ったのか、段々表情が真剣になってきた。そう、そうだ、そのままこの先を食べてくれ、あと2口くらいでゴールに辿り着けそうなんだ、夢の実現まで、あとちょっとなんだ。

「そう言えば、思い出したんだけど」
「?」
「去年もさ、これやって…確か、そのまま…あの…そ、そういうことにもつれ込んだ覚えがあって」
「……」
「気づいてるのか分かんないけど、イタチの、もうおっきいし…」
「……」
「は、…恥ずかしい……」

それをはっきり言われてしまった俺のほうが何十倍も恥ずかしいということは、なまえには伝わらないだろう。自分のものが嫌というほど主張してしまっていることくらい、とうに解っている。解っているけれど、それをどうにかできるのは、やっぱりこのゲームを完遂できてからなのだ。今、口に咥えているポッキーを全部食べて彼女を押し倒すことくらい造作もないこと。でも。それは違う。俺が口に咥えているポッキーを彼女が食べて2人の唇が重なってキスをして、それから、が重要なのだ。
俺はまた、顔をちょいちょいと動かして催促する。顔を近づけたら思いっきり背を反らされて少し凹んだ。無理矢理はいけなかったらしい。

「…わ、わかった、わかったから…目、瞑って?」

そんな、なまえが自ら近づいてくれる美味しい状況で、目を瞑れと?
でも、逆にそれが嫌だと駄々を捏ねている状況でもなかったし、自分の中での時間も余裕もなかった。仕方あるまい、そこは譲歩しよう、と目を瞑る。
なまえが深呼吸する音がやけにいやらしく響く。
次の瞬間、顔がぐっと近づいた、

ぱき、
という音と共に触れた鼻と鼻、離れようとした肩に慌てて後頭部を押さえて止めた。
もう逃げるなよ、次は俺の番だ。

ぱき、

すっかり溶けた甘いチョコが口に広がる、と同時に柔らかい感触が唇を支配する。さりげなく背に腕を回して引き寄せれば、観念したのか大人しく身体を寄せる彼女の愛しいことと言ったら。ポッキーを早々に咀嚼して彼女の唇から繋がる口内へと舌を伸ばせば、同じく甘ったるいチョコの味。思う存分に味わってからゆっくり離すと、その口からは甘い吐息が溢れた。

「は、あ」
「…なまえ」
「なに?」
「来年もこうして俺と同じことをやってくれるか?」
「えっ…」
「俺は来年も再来年も、その先もずっとなまえと一緒にいたいんだ」
「…しょ、しょうがないなあ」

ずっと一緒に居てくれるならいいよ、なんて、ああ、彼女はどうしてこうも俺を(主に性的に)悩ませるようなことばかり言うんだ。もう少しこの柔らかい唇を堪能していようかと思っていたけれど、それはどうやら無理そうで。胸に顔をうずめている彼女を抱き締めて、寝室に行こうと囁く。一緒にベッドに入ったら、その先はもう、お察しな展開。
彼女の衣服を剥ぎ取りながら、今日は俺のポッキーを何回食べさせることができるのだろうかと考えた。


ポッキーゲーム'14

(やっぱり今年で中止…!)
(それはナンセンスだ、話が違う)


20141111

   

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